第13話 専用武器
帰宅した僕は、さっそくスマホを開いた。
御影玲司に教えてもらったことを、もう一度整理する。
装備。スキル。戦闘経験。
まずは装備から調べてみることにした。
検索画面には、たくさんの武器が並んでいた。
剣、槍、弓、短剣、杖。
他にも、斧や大剣、双剣なんてものまである。
「武器って……こんなに種類があるんだ」
それぞれに特徴があって、使う人によって向き不向きもあるらしい。
「僕には何がいいんだろう」
そう思いながら、ステータス画面を開く。
力は高い。
だけど、それだけでいいわけじゃない。
11話でそれを思い知らされた。
「……武器を変えたら、何か変わるのかな」
画面を眺めていると――
ザザッ。
一瞬、ステータス画面にノイズが走った。
「……え?」
目をこする。もう一度見る。
さっきまでなかった項目が、そこに表示されていた。
【武器種】
【腕輪】
「……なんだこれ」
恐る恐る項目をタップする。
すると、詳細が表示された。
【名前:零環(れいかん)】
【装着可能等級:無色級】
【装着可能レベル:1】
【攻撃力:0 (レベル1時点)】
【装備説明】
無色級専用の腕輪型武器。
装備者のレベルに応じて能力が解放されていく成長型の武器であり、防具としての役割も持つ。
『零より始まり、果てを定めず』
「……無色級専用?」
僕は画面を見つめた。
さらに下へスクロールする。
【価格:0円】
「……0円?」
思わず声が出た。何がなんだか分からない。
でも――
「こんなのがあったのか……」
使えるなら、使ってみるしかない。
僕は迷わず購入ボタンを押した。
【零環を購入しました】
「……本当に買えた」
しかも、0円。
よく分からない。
けど、今はそんなことを気にしている場合じゃない。
僕は零環を手に取った。
黒とも銀とも言えない、不思議な色をした腕輪。
そのまま腕に装着する。
カチッ。
腕輪が手首にぴたりと収まった。
その瞬間――
【零環を装備しました】
【装備者の現在レベルを確認】
【現在レベル:9】
【レベル9までの能力を解放します】
「……え?」
次々と文字が浮かび上がった。
【攻撃力:27】
【Lv1|ステータスアップ】
力・素早さ・体力・魔力・運をそれぞれ10上昇させる。
思わず画面を見直す。
全部のステータスが10上がっている。
そして――
【Lv3|防御バリア】
攻撃を防ぐ防御膜を展開する。
「防御まで……」
11話で何度も攻撃を受けた。
これがあれば、あのときとは違う戦い方ができるかもしれない。
【Lv5|闘気玉放出】
闘気の玉を放出し攻撃する。
「攻撃もできるのか……」
近づかなければ攻撃できない。
そんな僕の戦い方そのものが変わる。
そして――
【Lv7|武装展開】
一時的に武器を形成する。
あらゆる武器種に変形できる。
「……あらゆる武器?」
さっきまでスマホで調べていた。
剣も。
槍も。
弓も。
その全部を使えるということなのか。すごい。
【Lv9|肉体強化】
戦闘中、装備者の能力を一時的に上昇させる。
「…………」
僕はしばらく何も言えなかった。
防御。
遠距離攻撃。
武器の変形。
肉体強化。
一つの武器に、これだけの能力が詰め込まれている。
「……すごすぎる」
思わず零環を見つめる。
11話では、何をやっても攻撃が当たらなかった。
力だけ上げても勝てなかった。
でも――
「これなら……!」
第一門をクリアできるかも知らないと希望が見えてきた。
もしかしたら。
そして、もう一つ思い出す。
「そうだ。スキルも調べないと」
御影さんは、強くなるためにはスキルも重要だと言っていた。
僕はステータス画面のスキル項目を開こうとする。
その瞬間――
ブブッ。
短い電子音が鳴った。
「……?」
画面に文字が表示される。
《無色級は零環によってあらゆる能力が付与されるため、スキルを取得することができません》
「…………」
僕は画面を見つめた。
「……なんでだよ」
少しだけ残念だった。
せっかく強くなる方法を見つけたと思ったのに。
でも、腕に装着した零環を見る。
「……まあ、これだけあるなら仕方ないのか」
僕は小さく息を吐いた。
だけど――
零環には、まだ僕の知らない力が秘められている。
そして、僕自身にもレベルがある。
「……まだ強くなれる」
僕はそのまま零環を装着した状態で、第一門【獣】へ向かった。
◇◇◇
門の中へ入る。
まずは、零環の能力を試してみる。
「武装展開」
腕輪から光が伸びた。その形が変わり一本の剣になる。
「……本当に出た」
剣を握り牙狼と向き合う。
牙狼がこちらへ飛び込んできた。
僕は剣を振る。ズバッ!
牙狼の身体を捉えた。
「……拳で戦うより楽だな」
次は槍。さらに斧。短剣、弓など。
いろいろな武器を試してみた。
「……これ、か?」
短剣を手に持つ。
軽い。動きやすい。
牙狼の速い動きにもついていける。
僕は短剣を構え直した。
牙狼が飛び込んでくる。
一歩下がる。
その勢いを利用して横へ回り――
ズバッ。
牙狼を倒した。
「……これが一番合ってる」
武器によって、こんなにも動きが変わるのか。
今まで僕は武器について何も考えていなかった。
ただ力を上げればいいと思っていた。
でも、それだけじゃないんだ。
零環ではその時に合った武器を選ぶこともできる。
僕はそのまま、何度も牙狼と戦った。
ただ倒すだけじゃない。
どう動くのか。
どのタイミングで攻撃してくるのか。
どこへ避ければ反撃しやすいのか。
一匹ずつ、動きを覚えていく。
そして――
少しずつだけど、動きが分かるようになってきた。
これが御影さんの言っていた戦闘経験なのかもしれない。
数字にはならない。
でも、昨日まで知らなかったことが少しずつ自分の中に増えている。
そのときだった。
「……っ!」
牙狼とは違う気配。茂みから現れたのは――
刃牙狼。
「こいつか」
以前の時に僕を追い詰めた相手。
刃牙狼が低く身構える。
そして、一気に飛び込んできた。
速い。僕は紙一重で避ける。
反撃。
だが、刃牙狼も簡単には倒れない。
「くっ……!」
何度も攻撃を受けそうになる。
それでも逃げない。
相手の動きを見る。
足の動き。
身体の向き。
攻撃の直前に生まれる、ほんの小さな変化。
「……見える」
少しずつ。
ほんの少しずつだけど、この前のときとは違う。
何度も繰り返す。
そして――
「ここだ!」
刃牙狼の懐へ入り、短剣を振り抜いた。
ズバッ!
刃牙狼が倒れる。
「……勝った!」
僕は息を整えながら、倒れた刃牙狼を見る。
「……これも経験なんだ」
その後も僕は、第一門【獣】へ何度も通った。
牙狼と戦い。時々現れる刃牙狼とも戦う。
負けそうになりながらも、何度も戦った。
戦うたびに、少しずつ相手の動きが分かるようになっていく。
そして――
僕は気付いていく。
強くなるっていうのは、ステータスの数字だけじゃない。
武器を知ること。相手を知ること。
そして、自分自身の戦い方を知ること。
「……もっと経験を積もう」
僕は短剣を構え直し、もう一度牙狼の群れへ向かって走り出した。
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