プロローグから第5話までを拝読しました。雨の音だけが響く部屋で「配偶者という名の『資産』」になれと宣告される第1話の冷たさと、第2話に全文が置かれた婚姻契約書の「乙側からの解除は認めない」の一文で、この結婚の出口のなさがはっきり形になっているのが印象的でした。それだけに、第4話で両親が組み上げたADCSの「誰も取り残さない」という思想が語られ、咲良の微生物研究がそれと地続きだと分かる流れが効いています。第5話で新居に顕微鏡を持ち込み、バクテリアを「私のパートナーたち」と呼んで理人を絶句させる場面は、買われた側のはずの咲良が自分の軸を一度も手放していないことの証のようで、「おやすみなさい」に理人がわずかに体温を見せる締めも良かったです。ラボでの氏名変更の申請に、石像のように止まった先輩の手の行方も気になります。