通夜から戻った彼の携帯に、死んだ筈の
彼女からの着信が入る。
大型トラックと歩行者の事故だった。
雨の夜、パイパスの近くで。
顔の半分と肋骨をトラックの後輪に巻き
込まれた棺の中の彼女は、出来の悪い
蝋人形の様に見えた。
早く、降りて来て。
深い地の底。そこには何でもあるという。
学校も、そして子供の頃に花火を盗んで
怒られた神社も。
あの日。
早くして。じゃないと君、自分が誰だか
分からなくなるよ。
死んだ彼女に逢いに、バイパス沿いの神社の
隙間から、地下へと降りて行く。
あの、雨の日のこと。
彼女は生前のままの綺麗な姿で、自分とよく
似た男と一緒にいた。否、自分自身だった。
細い手首を、無理やり引き離して
彼女と一緒にいる、自分と瓜二つの男。
死んだ彼女を殺しに。そして自分を殺しに
黄泉比良坂を転げ落ちては這い上がり
ナイフの鋒をぬるい血が伝う。
ポケットの中の携帯が震える。
それも直ぐに、国道を走るトラックと
降り頻る雨音にかき消されて行く。