本作は、クリーブランドの画家アルバート・フランシスの半生を通じて、芸術と異界が静かに交錯する瞬間を描いた秀逸な怪奇譚だ。
クトゥルー神話に馴染みのある読み手からすれば、物語のモチーフは、あれなんだなと分かる仕組みではあるが、けれども抑えた筆致で、風景画の美麗さから始まり、頽廃都市、王の不在へと至る作品群は、単なる幻想美ではなく、読者の背筋を冷たく撫でる異常の侵食として迫ってくる。
特に最終章で明かされる真相は圧巻で、芸術家の創造がどこまで人間の領域であり得るのかを問いかける。静かに、しかし確実に心を掴む一篇。
あとがきを読むか否かは読者に委ねられているが、物語背景を知るという一点に関しては読んでおいた方が作品理解が深まるものと思う。