ある日から、亡くなった親友・楠本が見えるようになる。語り手は近況を報告し、相談する。相手は黄泉の国から来た友人だ。会話が終わると姿は消え、プレステには埃が積もったまま残る。その落差が、この作品の芯にある。
形式はほぼ対話だけだ。話題の多くは、Web小説の投稿サイトをめぐる不満、数字、規約、人間関係である。楠本はそれを一つずつ推理し、ときに辛く、ときに冗談めかして切り返す。サイトの仕組みそのものへの断定というより、書き手の疑心と孤独が、亡き友の口を借りて整理されていく過程に読める。
印象に残るのは結論の正しさではない。話が尽きたあとで「そうだ、あいつは死んだんだった」と気づく間である。遠方とは距離ではなく死であり、相談相手はもう返事を返せない。それでも翌朝、語り手は投稿の続け方を考え始める。励まされたというより、一人で抱え込まない口実を、死者との会話に見つけている。
創作の正解を示す話ではない。書き続ける理由が揺らぐときの、静かな独り言に近い対話集。
亡くなった親友・楠本と語り合うという不思議な形式を通して、創作活動への悩みや孤独、承認欲求、人とのつながりを描いた対話劇です。
物語の大半はWeb小説投稿サイトを巡る考察や愚痴?で進みますが、本質はサイト批判ではなく創作を続ける理由を亡き友とともに探す過程にあります。
楠本の言葉は時に辛辣で時にユーモラスですが、その根底には友人を励まそうとする温かさがあります。姿を見せては消える親友との会話にはどこか哀愁が漂い、「遠方」とは黄泉の国であることを思い出す場面が印象的です。
創作を続ける人なら共感できる迷いや葛藤が詰まった静かな対話文学です。