この記事はギガントアーム・スズカゼ第八話の書き上がった最新分を掲載しているものです。
これまでの話は下記リンクから読めます。
https://kakuyomu.jp/works/16817139556247117561◆ ◆ ◆
バランスを崩すスズカゼ。無理な体制で拳を放った反動だ。切磋に体勢を戻そうとする一郎だが、新たなパドッサの追撃がそれを阻む。
「うぐあ痛ってえ!」
バランスを崩すスズカゼ。背後から嘴による刺突を受けたのだ。もっとも大したダメージではない。ブランケイド程でないとはいえ、スズカゼもまた同種の防御魔法を纏っているからだ。生半な攻撃が致命傷になる事はまずない。それは向こうも分かっている筈。だというのに、パドッサ群の攻撃が止む事は無い。
「痛でっ! いってえ!」
襲い来るパドッサ達の連携攻撃。右から。上から。下から。左から。絶え間ない一撃離脱に一郎は翻弄される。
「いって! おいフォーセル! 担当者! 反撃出来ないのかよ!?」
「出来ないんじゃあない。しないんだ」
「なんで!?」
ミスカは答えない。代わりに手元へ展開したホロモニタをじっと見る。肩部カメラと繋がるそれは下方、地面を捉え続けている。
ミスカには予測があった。敵が攻撃力の足りないパドッサを出した理由。空中戦に秀でる兵力でスズカゼを翻弄する理由。
「――来る」
「何が!?」
答える代わり、ミスカは一郎のコントローラを奪う。スズカゼの身体操縦権がミスカに移る。
「何を」
するんだ。一郎が言い終えるよりも先に、スズカゼの蹴りがパドッサの顔面を捉える。反動。弾かれるボールのように飛び離れる両者。更にミスカはスラスターを噴射、更なる速力を得る。
その一秒後、砲弾の嵐がスズカゼの居た位置を薙ぎ払った。
それはまるで逆向きの豪雨。パドッサの群れを容赦なく叩き落していく弾丸の発射元は、当然ながら地面の方向。ここでようやく、一郎は下へ目を向けた。
眼下に広がるオレンジ色。その天面部分に、先程と同型の砲台が姿を現していたのだ。それも大量に。
「ハリネズミかよ……!」
一郎が呆然とする合間にも、砲台はその一門一門がスズカゼへと照準を修正。更なる砲撃を開始する。
「う、お、おっ!?」
慌てふためく一郎だが、今彼の手元にコントローラは無い。代わりにミスカの操作を受けるスズカゼは、フェイントを織り交ぜた旋回飛行でどうにか嵐を躱していく。躱しながら、戦況を分析する。
威力。弾速。思ったよりも低い。直撃弾を受ければ厳しいかもしれないが――それでも二、三発であれば致命傷には至るまい。
ミスカでなくとも、一郎の技量なら切り抜けられる。何より今、ブランケイドは武器の形態だ。戦闘モードではない。アンカータイプ最大の隙が、目の前にある。
分は悪い。だが、それでも賭ける価値のある強襲。どうする? 提案するか――。
「撤退します。今。すぐに」
そんなミスカの逡巡は、ジットの即断に弾かれた。