「さて。さてさてだ」
コンソールを操作し、トーリスは倒れた二機の無人機をダメージコントロール。再起させ、包囲を狭めていく。
慎重に。されど手早く。
中々にそつの無い戦法。ミスカは舌を巻いた。
「参ったな、お手上げだ」
「お前いま無えじゃん手」
「そうだな。なら代わりに挙げといて貰えるか」
「そんな事言ってる場合じゃないですよ」
ジットが溜息をつくと同時、左右から近づいて来る無人グラウカの右腕が、音立てて展開。先に撃破された機体と同じガトリングガンが顔を出す。十字砲火の布陣。もはや逃れる術はない。ジットは歯噛みする。
「くぅ」
何たる事か。アクンドラの内憂どころか、エルガディアへの対策すらままならぬうちに捕縛されてしまうのか、と。
このまま交渉のカードとしてラッピングされる事、それだけは絶対に避けねばならない。その約束が彼の行動を保証する手形であり、そもそもジット自身がそれを許さない。
こうなれば。
「いや、手ぇ上げる前にさ」
切り札を、ジットが切るより先に。
「ダメ元の悪あがき、しても良いかな」
頬をかきながら、一郎はそう言ったのだ。
「何を言い出すかと思えば。僕以上に手も足も出ない状況にあるお前が、一体どんな手段を取れると言うんだ」
「まぁーそうだよな。普通に考えりゃな。けどさあ」
一郎は見た。
遠方、未だ堂々と地面に突き立っている、巨大な一振りの日本刀を。
◆ ◆ ◆
本編のリンクはこちらです
https://kakuyomu.jp/works/16817139556247117561