「足音、しなかったような気が」
「歩いてないからだろう。見ての通りスラスターで浮いている。歩行機能にも何かエラーが起きているのかもしれんな」
「なるほどー」
「諦めた顔しないでくださいよ加藤さん! まだ一機だけなら」
「ああ、まだ一機。しかも故障中であれば」
ぎこちなく、ハンドガンを三人へ向けるグラウカ。照準。引かれる引鉄。
「勝機は、まだあるッ!」
ミスカが叫ぶと同時、銃弾は着弾。今度こそ防御フィールドに激突した衝撃は、それまでに倍する音と衝撃をもたらした。一郎は転んでしまった程だ。
しかし、ミスカは逆だった。再び跳躍したのだ。
一直線の急上昇。狙うは、やはり頭部。半壊状態のものを全壊とし、機能停止を狙う算段。
だがグラウカとてその程度は読んでいる。上がる右腕。内部機構展開。顔を出したガトリングガンがミスカを照準。射撃。虫を払うようにばら撒かれる弾幕。
「ほう」
一部始終を地上で見ていたジットは、息を呑んだ。ミスカの見事さにだ。
ミスカの上昇は突如稲妻じみた軌道へと変わり、横殴りの弾雨を回避したのだ。
勿論完璧な回避ではない。数発受けている。だが彼の防御フィールドを破るには至らない。
ガトリングガンをばら撒きながら、グラウカはなおミスカを追う。宙を蹴り、ミスカは逃げる。必然的にミスカはグラウカの周囲を旋回するような形となり、グラウカはそれを追って緩やかに回転する。
一回。二回。三回目の回転に移りかけた時、グラウカの身体が少し傾いだ。ダメージによる影響だろう。
ミスカは、これを待っていた。
「しゅっ」
バックラーを構えつつ、鋭い呼気を吐くミスカは、一層強く宙を蹴った。
生じるのは弾丸じみた速度の飛翔。その照準先には、当然ながらグラウカの側頭部があり。
◆ ◆ ◆
全文のリンクはこちらです
https://kakuyomu.jp/works/16817139556247117561