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旧第1~3話 ここに眠る【ぷに沼】

『贅肉アンチの俺がぷにムチ透明少女に沼るまで』の1~3話を改稿したので、元の原稿をここに残します。

違いを楽しんで頂ければ。


第1話
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 小さい頃。
 顔も知らない女の子と約束をした。


「わたし、もっともっとかわいくなりますから、ちゃんと会ってくれますか?」
 
「じゃあ、僕はそれまでに立派な男になる! 君を守れるぐらい、大きくて強い男に!」


 15歳になったら、再会するという約束。

 相手の顔はまったく覚えていない。
 だけど、彼女のイメージはかすかに残っている。

 華奢で、かわいくて、強くて――まるで女児アニメのヒロインのような姿。
 
 今考えれば、この日を境に俺の人生は好転していた。
 親父との関係が変わって、生きやすくなった。

 だからこそ、彼女との約束は何よりも大事だ。俺の心の|拠《よ》り|所《どころ》と言ってもいい。

 どこまでも強い男になりたい。
 どんな誘惑にも負けない、真の|益荒男《ますらお》に。
 彼女の優しさに、少しでも報いるために。

 でも、なんとなく確信がある。
 
 彼女とは、もう2度と会えない。
 
 あれはきっと、俺を励ますための嘘だったのだろう。
 正体は幽霊とかそういうものかもしれない。
 そうでないと顔も姿も覚えていないことに説明がつかないし、すでに俺が15歳になっているのに、彼女は姿を表していない。

 だけど、それがなんだ。
 俺が彼女に救われたのは事実。
 もう出会えなくても関係ない。

 俺は俺を貫く。

 ずっとずっと永遠に――
 彼女のことを想い続けて、生きていくのだ。


 


 俺はこの時この瞬間まで、女子の裸体というものを見たことがなかった。

 特別自慢することではないが、生まれてこの方、女子と付き合ったことはなければ、手を繋いだことすらない。
 もちろんのことながら、口づけなどという|破廉恥《はれんち》行為に及んだこともない。
 つまりは童貞である。

 それはひとえに、理想の女性像に|操《みさお》を立てているからこそ。

 しかし残念なことに、俺はまだ理想の女性に出会えたことがない。
 もし出会えたら、俺の全てを捧げてもいいと思っているというのに、ままならないものである。

 まあ。
 
 逆に言えば、理想の女性以外の裸を見たいとは全く思わないということだ。
 そんな俺が、放課後の教室にて、女子の裸体を目撃している現状は異常事態だと言えるだろう。


「……ん? なに?」
 

 肉が揺れた。
 乳ではない。
 いや、乳も揺れているのだが、その比ではないほどに、ある箇所のインパクトがすさまじい。

 腹肉。
 ぽっちゃりと出たそれは、まるでプリンのように揺れている。

 さらには、太ももに隙間がない。
 肉と肉がピッチリとくっつきあい、股間の余白を肉で塗りつぶしてしまっている。

 ああ。
 見ているだけで、めまいがしてきた。
 俺が理想とする女体からはほど遠い。
 なぜ、こんなものを見せられているのだ。


「ん? あの男、わたしの方をずっと向いてない?」
「……貴様、何者だ」


 正気を取り戻せ。
 冷静になれ、俺。

 冷静に考えれば考えるほど、この状況はおかしいのだ。
 
 俺は被害者としか考えられない。
 
 確かに、女性の裸を許可なく視界に収める行為は万死に値するだろう。
 しかしながら、この女子は堂々と裸になっているのだ。
 放課後の教室という公共の場所で。当たり前のように。
 

「えっと……もしかして、わたしの姿、見えてるの?」


 こいつは何を言っていのだ。
 どこからどう見ても、見えるに決まっている。
 そこらへんの人間よりも肉々しい存在感を放っているではないか。


「しっかりと見えているぞ。そのハムのような腹肉もな」
「な――っ!」


 いや、顔を赤らめながらお腹を隠してどうする。
 他に隠すべき箇所があるだろうに。


「え、うそ。な、なんでなんでナンデ!?!?」


 こいつは何を動揺しているのだ?
 まさかバカにしか見えない服でも着ているの?


「本当に本当に見えてるんですか?」 
「さっきから見えていると言っているだろう」
「えっと、その……。今わたしは何本指を立てているように見えますか?」


 なるほど。
 それで本当に見えているのかを確認するわけか。
 賢いな。

 
「4本だな。左右で2本ずつ」
「うそぉ……」
「これで理解してくれたか?」
「本当なんですね……。全裸ダブルピースが見えるなんて……。アヘ顔ではないですが」


 なんなのだ、この不可解な会話は。


「一体、あなたは何者なんですか?」
「俺の名前は『|島田《しまだ》 |御手《みて》』だ。島田家の長男にして、このクラスの学級委員長をしている」
「えっと、知ってるますし、そういうわけじゃなくて……」


 俺の名前を知ってる?
 覚えていないが、どこかで会ったことがあるのか?

 
「えっと、その……。わたし、こう見えても透明人間ってやつでしてぇ……」


 透明人間?
 珍妙なことを言う。


「信じられんな」
「本当ですよ。実際、ここに来るまで誰にも見られていなかったので……」


 確かに、外で騒ぎが起きている様子はなかった。
 
 校内には、まだ部活動をしている学生がいる。
 裸の少女が校内を|闊歩《かっぽ》していれば騒動になること必至だろう。
 付近で服が脱ぎ捨てられた|痕跡《こんせき》もなく、教室についてから裸になった可能性はないだろう。


「なるほど」
 

 彼女の言い分に納得できる。
 いや、よくよく考えれば、透明人間の存在を疑うこと自体おかしいか。
 この世界には妖怪や怪異の類が存在し、日常的に触れ合っている。
 透明人間という特殊な存在がいても、なんら不思議ではない。

 
「ふむ」
 

 そうなると、ひとつの疑問が浮上してくる。
 俺はなぜ、透明人間を視認できているか。
 たしかに俺は少々特殊な血筋だが、透明人間が見えるなんていうピンポイントな能力を持っていなかったはずだ。

 あまりにも情報が少なすぎる。
 とりあえず、|曇《くも》ってしまった眼鏡を拭くとしよう。


「……なんだ?」



第2話
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「……なんだ?」
 

 メガネを外した途端、全裸少女の姿が消えたぞ。
 さっきまでそこにいたはずだ。確実に。
 幻だったのか?


「おい、どこに行ったんだ?」
「どうしたんですか?」


 声は聞こえる。
 そうなると彼女はまだ、そこにいるということになる。

 なるほど。
 つまり、俺が見えなくなったわけだ。


「このメガネが原因か」


 よくよく思い返せば、昨夜、親父がこのメガネを|弄《いじ》っていた気がする。
 おそらくは何かを仕込んでいたのだろう。
 そういえば、最近の親父はなぜかウキウキしていたな。
 何か関係があるのかもしれない。


「もう大丈夫だ。メガネが無ければ見えないようだ」
「そ、それはよかったです」
「では、失礼したな」


 原因がわかったならば、さっさとこの場から退散しよう。
 一応メガネはかけないおくべきだな。
 あの親父のことだから、他に仕掛けを|施《ほどこ》しているかもしれないからな。
 
 
「いや、本当に失礼じゃないですか……?」
「何がだ?」


 なぜそんなに不満そうな声をしているのだ。
 なぜ俺の前に立ちはだかる?
 透明人間の行動は理解に苦しむ。

 どのような顔をしているのか気になるが、相手が裸である以上、見るわけにもいかない。
 
 
「事故とはいえ、あなたは女の子の裸を見たんですよ?」
「そうだな」


 それは紛れもない事実だ。
 事故とはいえ、嫁入り前の女子の裸を見るなど、申し訳ないと思っている。

 
「ならせめて、もっと他の反応があるんじゃないんですか?」
「なるほど。一理ある」


 こうなってしまった以上、仕方がない。
 俺も覚悟を決めるべきである。

 さて、まずはベルトから行こうか。


「な、何を!?!?」
「決まっているだろう。俺も裸になっているのだ」


 誠意を見せなければ、俺は|益荒男《ますらお》でなくなってしまう。


「えっと、その、いい体をしてますね」
「これでも鍛えているからな」


 自分の体を褒められるのは悪い気はしない。


「ふ、ふんどしなんですね」
「俺は軟弱者ではないからな。」
「うわー。ふんどしってこうなってるんだ。食い込みしゅごい」
「あまり見ないでくれ」


 尻に鼻息がかかって、こそばゆいんだが。

 さて、服もきっちり畳み、俺は今ふんどし一丁の姿。
 これで準備は整った。


「このようなことをするのは初めてであるため、粗相にはお目こぼし頂けると幸いです」
「は、はじめて!? 粗相!? わたし、ついに――」


 まさか、俺がこのようなする羽目になるとは、露ほども思っていなかった。
 だが、これは必要なことなのである。



第3話
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 まさか、俺がこのようなする羽目になるとは、露ほども思っていなかった。
 だが、これは必要なことなのである。


「この度は嫁入り前の女性の裸を目撃してしまい、大変申し訳ございませんでした」
「……え?」


 裸土下座。
 これが俺の示せる、最大限の謝意だ。
 

「え、え、え……?」


 なぜ困惑の声を上げているのだ?
 謝罪を望んでいたのではないのか?
 いや、そうか。


「いくらでも」
「ど、ドエムなんですか……?」
「あなたが望むならド級のマゾヒストにもなろう」
「えぇ……」


 目の前の女性の気が済むなら、どのような行為も|甘受《かんじゅ》するべできだ。
 それが俺の責務。
 

「責任って、本当は結婚とか……」
「そうは言われても、あなたは俺の理想像とは程遠いゆえ。大変申し訳ない」
「……容赦ないですね、この人。ドン引きです」
 

 正直、俺はひどく落胆している。
 彼女の体に対してではない。
 女体にありもしない幻想を抱いていた自分自身に対して、だ。

 女の裸というものは無条件に価値があるものではない。
 恥じらいもなければ、肉体美もない。そんな裸体に、俺は興味を示すことができないようだ。
 今回、それを知れただけでも|僥倖《ぎょうこう》といえるだろう。

 
「それでも男ですか!? 女の子の裸を見るや否や、野獣のように襲いかかるべきじゃないんですか!?」
「そうは言われても、仕方なかろう」
「……わかりました。顔をあげてください」


 これは許された雰囲気ではないな。
 いくらでも殴られる覚悟はできている。


「……?」
 
 
 この感触は、手を掴まれたのか?
 メガネをかけていないから、何をされているのかも見えん。


「どう……ですか?」
 

 なんだ?
 この柔らかい感触は。
 体の一部を触らされているのか……?

 この柔らかいものはおそらく、脂肪の塊である。
 その中で、男性にわざわざ触らせる可能性がある部位は――
 

「これは腹か?」
「へ?」


 おや、この反応は不正解なのだろうか。
 

「なんでそうなるんですか……?」
「考察の結果だ」
「柔らかかったですよね?」
「ああ。あなたの腹は柔らかいだろう」


 よい触り心地である。
 アザラシに匹敵する癒しパワーを感じる。

 
「他にも柔らかい箇所はありますよね……? えっと、その……」
「ああ、確かにある。だが、そんなところを触らせる女なぞ、ただの痴女だ。存在するわけがない」
「痴女って……。いっぱい勇気出したのに……」


 さっきから何のための問答なのだ。

 
「……もういいです。あなたと話していると疲れるので」


 なにやら相手が折れたらしい。
 少し腑に落ちないが、まあいいだろう。
 肌寒くなってきたし、服を着てもいいはずだ。


「……ん? 君、身長何センチ?」
「なぜそんなことを聞く」


 たしかに俺の身長は高くない。
 しかし、いきなり身長をたずねるのは失礼極まるのではないだろうか。


「大事なことだから」


 ……ふむ。
 かなり本気の声音に聞こえるな。
 これに応えなければ、男が|廃《すた》ってしまう。


「167だ」
「……ちっさ。じゃあ、いっか」


 なんだその反応は。
 スンとした顔がありありと浮かんでくるぞ。


「それでは、もう君とは会うことはないでしょう」
「…………」


 足音からして、教室から出ていったようだな。


「ふぎゃっ!」


 まるでデブ猫が着地を失敗したような声だ。
 廊下で転んだのだろう。
 助けに行った方がいいのか?


「……歌でも口ずさまないとやってられないかも」


 この曲は、親父がよく見ている女児アニメの主題歌ではないか。
 中々いい趣味をしている。

 いや、透明人間が校内で歌うのはどうなんだ。
 学校七不思議になってもしらないぞ。


「まあ、俺が気にすることではないか」
 
 
 大騒ぎにならなかった時点で上々と言えるだろう。
 彼女が言った通り、もう出会うこともないだろうし、さっさと忘れるのが吉だ。

 まあ、体は全然タイプではないが、顔は好みだった。磨けば輝くだろうから、惜しい気もするが。


「ん?」


 今、ポケットの中のスマホが震えたな。
 メールが来たのか。
 親父からだ。珍しいこともある。

 それにしても、なんでいつもCメールなんだよ。
 いや、今はSMSとか言うんだったか。
 
 細かいことはいいか。
 親父からの連絡は緊急の場合が多い。すぐに確認しなければならないのだ。


『今夜、|御手《みて》の|許嫁《いいなずけ》が家に来ちゃうから、楽しみにしておいてネ♡』


 ふむ、なるほど。
 家に俺の許嫁が来るわけか。

 これは一大事だ。
 俺の人生の今後を決める、大事なイベントになることだろう。
 だが、|これだけは《・・・・・》親父に言っておかねばならない。
 

「俺、許嫁の話、初耳なんだがなぁ……」

 
 あの|鶏頭《とりあたま》親父は……まったく。

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