甲虫が大量発生するという事件も、なんとか片付いてようで藍色のバーヌースを脱いだ。その下にはアンバーのワンピースが現れる。バーヌースのポケットにしまっておいたベールを被れば、見習い聖女に戻るわけ。
そんな時、
羽音がして1匹の甲虫が私目掛けて飛んできた。オジーン、ドゥバァーともに叫んで
「危ない!』
「トゥーリ!」
たまたまなんだけど、未だ手に持っていたジョゼル権仗を振り上げ、飛んできた甲虫をはたき落とした。粘着質な音をたてて、甲羅部を砕けさせて地面に落下した。止めは走り近づいてきてくれたドゥバァーがしてくれた。
「お前、何気に荒っぽい使い方するなぁ。一応、宝具だぞ」
「権仗の事? これってメイスでしょ。あのぶん殴る奴」
「確かにそうだが」
私は両腕を組んで、さもありなんと答えた。
「本来のお役目を果たしたんだからいいんだよ」
「なかなか、豪胆な奴なんだな」
まあ、その後、捜索したけど甲虫は見つからなかった。本当に終わりなんだねと'主'へ祈りを捧げて、この場を去ることにした。
「帰りなら、私共で送りますのに」
守護令嬢レディ・コールマンは申していただけるのだが、
「お言葉ありがとうございます。帰りに所用がございますゆえ、こちらで失礼させていただきます。迎えも直に来ましょう」
できれば関わりたくない。静かに教会へお勤めしたいのだけど、周りがさせてくれない。
「残念ですわぁ。しょうがありません。次もよろしくお願いしますね」
背中越しに手を振って答えておく。これも不敬罪になるのかなあ。
「お疲れ様。迎えに来たよ」
帰りのみちすがら、赤毛の獣人狼族が立っていた。やはりアンバーのベールを被り、同色のケープを羽織っている。彼女の名はセリアン。教会部屋済みの見習い。私と同じだね。
「帰りに肉屋に寄ろか。オファル肉を分けてくれるって」
「またぁ、 練って、つくねかぁ。飽きちゃうよ」
ちょっと不満そう。
「贅沢できれば良いんだけど、教会の懐も寂しいんです。いただけただけでも感謝しないと」
「でもよう、ここんと魚のアラかつくねだろ、後は、やっぱりもらった野菜ばっかじゃないか」
「ごめんね、教会の壁の修理でお金かかっちゃて。ないのよ」
そうなのよ。先日、大型の異形が暴れ回り、街の建物を破壊して回る事件が起きた。なんとか駆除できたんだけど教会の明かり取りの大窓が被害を受けてしまったんだよね。ご近所さんから多少の寄付があるとはいえ、それだけでは足らない。結局、普段の教会の維持費を本部から前借りしてやり繰りしたのよ。そのせいでカツカツの運営をしてるって訳なの。
「それを言われちゃ、敵わないねえ」
ほんとーに他言無用の秘密なんだけど、その大型異形がセリアンだったりする。なんか変な事情に巻き込まれた挙句、暴れ回ってしまった。異形に変身するは、木っ葉微塵になるは、矯正転身させられるは、凄まじい経験の持ち主なんだね。私も関わっているから、内緒なんだよ。内緒!
そんな会話をしながら、教会へ向かっていたのだがセリアンが声を顰めて話してきた。
「トゥーリ。後を誰かつけて来てるけど、知り合い?」
「セリアも気づいてたの? さすが獣人狼族だね。」
