https://kakuyomu.jp/works/16817330666699034635/episodes/16817330669160988102彼氏と死別いたしまして、これって事実婚?未亡人! ポンコツに転移したぁ。〜マリとマリン〜 2本立て
まずは17話更新です
すいません。クリスマスに入れたかったんですが大遅刻です。
では
喧騒の中、人混みに押されて、通りを出てしまった。翔は振り返る。
「壮観の一言だねえ」
「そうなりよ」
茉琳は手で目を押さえている。
「まだ、目の中がチカチカしてる。光の粒々が目の中いっぱいなりぃ」
辛抱たまらんとパタパタと足踏みまでしている。
LED電球をこれでもかって投入をしたどこかのお城をイメージしたアーチ。それが数十枚通りに跨り並んでいく。ギャラリーはそこをゆっくりとして、楽しんでいたりする。
「良かったしぃー。翔,ありがとなり,一緒に来てくれて」
「感謝はいいよ。満足した?」
「うん」
返事をした茉琳の顔が眩しくて、翔の記憶にあることか、洗い流されてしまう。
数時間前に遡れば、
「翔、イルミ見に行きたいなり。連れてってなし」
大学内の2号館1階にあるカフェテリアでホワイトソースパスタを啜っていた翔は茉琳に見つかった。座っていた窓際テーブルの隣の席に茉琳は滑り込んで、すぐに話しかけてきたのだ。年の瀬も迫り、今日の営業を最後に年が明けるまでカフェテリアは閉じられてしまう。今年のシメという具合で食べに来たのが運の尽きだった。
「茉琳さん。なんで俺がここにいるってわかったの?」
「勘⁈」
実のところは、茉琳が当てもなく歩き回って、たまたまカケルが視界に入っただけだったりする。
「偶々、ここに食べに来かのだけど、もし来てなかったらどうしてたの?」
「でもぅ、会えてるなり。運命なしよ」
「言ってろ」
(多分、歩き疲れて、どこかで蹲っていたんだろうな)
なんとなくと言うか、ほぼ確定事項だと翔は考えた。
「保護できたと思えば良いか」
翔は聞こえないぐらいに呟いたはずなのに、
「なんか失礼なこと言ってなしか?」
勘づかれていたりする。
「えっ、何?」
とぼけるしかない翔であった。
「お外でねぇ。イルミネーションが綺麗って聞いたの。見てみたいの。でも1人じゃいけないのは、翔,知ってるだしぃ。だからお願い」
翔としては付いていくことぐらい構わなかったのだけれど、タイミングが悪かった。
「ごめんな。今日、実家に帰ることになってるんだ。ウチで家族みんなで食べるからって呼ばれてるんだよ」
「えぇ、それはないなりな。イルミも今日までなり」
茉琳はがっくりと肩を落としてしまう。
「悪いな」
翔は茉琳に告げた。
カチャン
いきなり、パスタ皿隣に置いていたミルクティーのカップが倒れる。翔は驚き見ると茉琳がテーブルに突っ伏していた。倒れた時に伸ばした手でカップを倒してしまったようだ。溢れたものを吸って、のびた茉琳のブラウスの袖の色が変わる。
「茉琳」
翔は叫んだ。そう、茉琳は,いきなり意識を失ってしまう。元彼の自殺に巻き込まれ、一酸化炭素中毒になった後遺症で倒れてしまう。
かはっ
そのうちに茉琳は息を吹き返し頭を起こす。
「あー、袖がビシャビシャ。お気に入りだったのに。泣いていい?」
実際、茉琳の目からマスカラの混じった涙が流れている。それが自分のしでかした結果を嘆いてか、それとも自分の体を憂いての涙なのか。多分両方なのだろうと翔は感じた。
手持ちのハンカチで茉琳は涙を拭い、
「ごめんなしね。ウチの我儘なりね……いってらしゃい。来年、また会ってなし」
再び茉琳の目から涙が流れだす。
それを見て翔は天を仰いだ。そして、
「あのさあ、これから来年まで茉琳は、どうしてるんだ?」
彼女は涙で潤む目を瞬せる。
「どうするって、ひとりなり。行く処なんてないなりよ」
確かにそうだった。翔は気づく。そして彼は再び天を仰いだ。元に戻して手持ちのバックからタブレットを取り出すと、それを起動。ブラウザーをオープンするとマップアプリを開く。ポチポチと画面をタッチして画面を読み解いていく。そして,今度はスマホを取り出すと、やはりポチポチ。そしてそれを耳に当てる。
「あっ。母さん。俺。ちょっと帰るの遅れる」
通じているのは自分の母親。
「なんで、早く帰れないだにぃ」
「ごめん、ちょっと見たいものできちゃって。ネットで話題になっててさ」
「どれくらい遅くなるだにぃ?」
「新幹線使うから,そんなに遅くならないらぁ」
「早く、きなさいね。料理が冷めるだにぃ」
徐に翔は茉琳を見る。何ってキョトンとした顔を彼女はしていた。
「客間の布団,使えたっけ? そう」
「いきなり,何ね? お友達でも連れてくるの」
「そう」
そして翔は茉琳に声を掛けた。
「茉琳,ウチ来るか? どうせ御1人様なんだろ?」
「うん」
茉琳は即答する。顔は笑顔に変わり,またまた涙が流れだす。
するとスマホから翔の母の声がする。声を細めている。
「ねえ、翔。もしかしてお友達って、前に来た子?」
「そうだよ?」
少しの逡巡の時間だろう。無言が続く。
「じゃあ、用意しとくら。早くきなさいね」
そう言って通話が切れた。
翔が携帯を耳から離すと彼女は恐る恐ると言う具合に聞いてきた。
「いいの,私なんかで」
「何言ってるの。お前を1人にする方が怖いよ。さあ、イルミネーション見に行こう」
茉琳は、カフェテリアの中,衆人環視の中でもお構いなしで翔を自分の豊満と言える胸に抱え込んだ。
「ちょっ、ちょっと離して」
翔はそんな茉琳の腕をタップする。彼には女性に対してトラウマがある。過呼吸になるんだ。でも茉琳に対しては、それが起きないでいる。
そして,彼には亡き盟友と誓いがある。更に抱きついてくる彼女が捨ておけない存在になってきている。
汚れた衣服を着替えにマンションに戻り,彼女は大きめのトートバッグを持ってきた。もちろん翔は後を付いていく。
「さあ,いくなり」
そしてイルミネーションを楽しんだ後,地下鉄を乗り継いで駅に着き、新幹線に飛び乗った。もちろん、停車する駅をホームにあるディスプレイで確認して。
そのタイミングで
グウぅ
翔は茉琳の腹の音を聞く。
「お腹空いてるの? 何か買おうか?」
真っ赤に染まった顔を手で隠している茉琳に翔は言葉をかける。しかし彼女は頭を振る。そして持ってきたバックから何やら小さい紙袋を取り出すと、
「翔の家で食べようかと持ってきたなりな。買ってあったの」
中身はケーキである。茶色いチョコレートクリームのロールケーキであった
「翔も、お腹空いてるなしかえ? ここで食べへん」
「もしかしてブッシュドノエル?」
「そうなり」
新幹線は日の落ちた暗闇の中,翔の地元を目指して走っていく。