書いては見たけれど、
怪談なんだろうか
古くなったイグサのかおりがする部屋にあった折りたたみ式の小さなテーブルの上には、さっき大家さんにもらった小さな鍵が1つある。
それと手元にある替えの下着とか入っているバックが今の私の持ち物全てだったりする。
「灯をつけないと」
日も落ちかけ薄暗くなった中、立ち上がって丸い蛍光灯を見た時、
(みぃ、 ぐみぃ、 つぐみ)
怒声、怒っている父の顔と叩かれて痛くなった頬と頭を思い出して疼くまってしまう。
大丈夫、大丈夫。ここには、あの父はいない。病院に入ったの。
DVを受けて民生委員に相談したら、ここを紹介してくれた
もう一度立ち上がり手を伸ばした。
「冷っ」
手の甲に冷たいものが触り、引き紐を取り損ねる。
「冷っ」
今度は脛に冷たいものが触ってきた。足を掴まれた感じがして慌てたものだから、後ろに倒れ尻餅をついてしまった。
倒れた時にスカートが捲れ顕になった足を冷たいものが這い上がってくる。
ペタリ ペタリ
更に上がってくる。お腹、胸と、
ペタリ ペタリ
そして首にかかる。
グッ
「冷っ」
絞めてきた。冷たい感触に首を絞められてる。強く強くて、声も出ない。
苦しくて、微かに開けた目には首を絞めている手が見えた。
苦しくて、微かに開けた目で見上げた天井の柄が吊り上がった目をした女の顔に見えた。
父じゃない。父の手は暖かった。
その時、テーブルが飛んだ。バックも飛んだ。蛍光灯が揺れて、瞬く灯りの中にもつれあうものが見えた。だれか2人が争っている。ガラスも割れてしまった。私にできることは目を瞑り耳を塞いで縮こまっているだけ。
そのうちに喧騒も止んだ。私は暖かい手で頭を撫でられている感じがして目を開けた。
テーブルから、バックの中身から、散乱して唖然としてしまった。
大きな音に驚いたのだろう。大家さんが来て、やはり唖然としている。
「これ、あなたがやったの?」
私は否定する。
「ごめんね、忘れてた。おばあちゃんが言ってたの。ここで殺しがあった事故物件だって」
私は否定する。
「多分、もう大丈夫ですよ」
「そうそう民生委員の人から電話あって、あなたのお父さん亡くなったって」