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完結しました!『天を描けど、光なお遠く~チェルデ国絵画動乱記~』あとがき(ネタバレあり)

 約2年の執筆期間を経て、「天を描けど、光なお遠く〜チェルデ国絵画動乱記〜」が完結しました。
https://kakuyomu.jp/works/16817330661485346893

 幕間含めて31万字です。これまでつるが書いた作品の中で最長となりました。いまはアネシュカたちの人生を書き切ったぞー! という満足感でいっぱいです。

 もとは第一部の構想しかない物語でした。でもアネシュカ、マジーグ、ファニエルたちのその先を書きたいという気持ちが次第に深まり、結局第二部、第三部と続くストーリー展開となりました。膨らますことができて本当に良かったと思います。アネシュカとマジーグが結ばれて、めでたしめでたし、で終わるのは確かに形としては綺麗だったんですけど、この作品で書けることはもっとたくさんある、そう気づいてこその第二部と第三部でした。

 まず、ラストに関して言えば、実は5月初頭にそれまでのプロットをひっくり返しまして、自分でも「こうなったか!」というようなラストになりました。まず迷ったのはマジーグを「第九章 初夏の嵐」で生かすか殺すか、というところです。マジーグを生かす術が見つからなかったのですよ。ロウシャルにお願いしようとしたら「私、現実主義者なんだが……」とか言い出すんで……。結局、幸いにもファニエルがその役割を引き受けてくれましたが、今度は彼がなぜ助けたかを考えるのが、大変で。とにかく彼はなにか芸術的好奇心が満たされないと動いてくれない男なので。それはアネシュカとマジーグの絵を描くということで引っ張り、なんとかなりましたが、それを受けてのラストでは、ファニエルはオルガに刺されて死んでしまうプロットになってました。
 
 でも、それだとオルガがあんまりにも救われないし、なによりアネシュカがそういう師の死に方を、またも認めるわけないな……と思い直し、プロットを練り直すことになりました。第一部のファニエルの「死に方(生き方)」に対して、アネシュカが今度はちゃんと意見しなきゃ彼女じゃないし、それが彼女が成長したってことだろうだと思いまして。それにこれはアネシュカが主人公の物語ですのでね!

 それでちゃんとアネシュカに「今度はちゃんと自分の人生を生きてください」とファニエルに言わせることができました。よかったです。それでこそのアネシュカですから。そして、アネシュカ、マジーグ、ファニエルというこの3人のエピソードで本編最終話を締めることができたのも、本当によかったです。この3人が主軸になって織りなした作品でしたので。

 あと、この作品はつるの私的な芸術というか創作に対する考えみたいのがすごく反映されているのですが、第三部では、本編最終話のアネシュカのファニエルへのこの言葉、まさにそれなんですね。「自分の人生をちゃんと生きた結果として、創作なり芸術活動を行いたい」というのは小説を日々つらつら書いてるつるの心情そのものであって、それが逆になってはいけないと思ってます。だからこそアネシュカにあのセリフを言わせたわけです。あのセリフ、要約すれば「人生から逃げるな、ちゃんと生きろ」ということですからね。それもあってあのセリフを書けてよかったです。

 また、これも個人的なことなんですけど、この作品は芸術のことを書きながらも、芸術的素養はゼロの人間が書きました。もちろん人に聞いたり本で調べたりはしましたが、つるは芸術シロートです。ですが、日常でも芸術に近い仕事をしながらも、専門的勉強はなんもやったことないつるには「その表現の知識に詳しい者だけが、その表現について語れるわけではない」という持論がありまして、その意地が書かせた作品でもありました。これは文学についてもそうだと感じています。文学は文学的素養のある人間だけのものではない、いつもそう思ってます。

 あとはですね……書いてて気づいたこととしては、これももの凄く個人的なことなんですが、つる、『ゲド戦記』特に4巻の『帰還』が大好きなんですけど、「あ、第三部はつるのゲド戦記へのオマージュだな」ということです。『帰還』は老いたゲドがどう生きたか、みたいな話ですが、書いててたぶんつるは三部のマジーグをだいぶ重ね合わせていたと思います。とはいえ話としては全然違うので、あくまで個人的なオマージュですね。
 なお本編ラストではマジーグは51歳になっているのですが、なんとかつるがその歳を超さずに書き終えたのも個人的喜びポイントです。
 
 そしてそして。
 終章での最後の数節は「これは人間と絵画の話でした」ということの象徴です。そしてラスト一文を思いついたとき、ちゃんと物語が「歴史」となって終わるな、というのが見えたのが、感慨深いです。
 なおこのラスト一文は、つるが多大な影響を受けた『銀河英雄伝説』オマージュです。
(あと終章にはもう一つ、銀河英雄伝説オマージュがあるんですよ。マジーグの最期がそれです。気付いた方おられるかな?)

 大切な作品になりました。いや、なれました。今の自分だからこそ書けた、そういう要素がいっぱいの物語でした。

 というか、自分にとっては「わたしの読みたいファンタジー」をただただひたすら書いた、そんな作品でした。なので書き上げていちばんうれしいのは、たぶん、つる。うへへ。

 みなさまにおかれましては、応援していただき、本当にありがとうございました! すべての登場人物に拍手をお送りいただきたいとともに、またたまにアネシュカたちのことを思い出してくれればうれしいです。
 心よりの感謝を込めて!


 2025年 6月13日 つるよしの

※画像は、本作品を読んでいただいていた本業のお客さまからいただいた絵画モチーフのお菓子。完結したらいただこうと思っていたのでした! ありがとうございます!

2件のコメント

  • ラストの一文、やはり『銀英伝』のオマージュだったのですね!!!
    ツイートを拝見して、たぶん『銀英伝』がお好きなのだろうと思っていたので、もしかしたら……と思ってはいたのですが、もし間違っていたら失礼かと思い、コメントでは言及せずにいたのです。
    そしてマジーグの最期とアネシュカの述懐は……ヤンとフレデリカ……ですよね?
    はい、私も『銀英伝』が大好きで、多大な影響を受けたひとりなのです (≧▽≦)ゞ
  • ハルさま

    最後までお読みいただき、ありがとうございました!
    そうなんです、わたしも銀英伝には多大な影響を受けてますね。ラスト一文もそうですし、そしてヤンとフレデリカも大正解!お流石です。
    あと他に影響受けた点としてはメルカッツとシュナイダーの上官副官関係もありますね。そう、副官ポジションが好きなのはそこからです。
    こちらでの副官はなかなかに拗らせた男になりましたが……!
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