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いくひ誌。【771~780】

※日々とはいつか途切れる断絶の名を死。


771:【なにもしたくない】
なにもしたくない。生きたくないし、死にたくない。


772:【散策】
深夜二時になにともなしに自転車に乗ってそとに繰りだした。秋も暮れ、空は高く澄みわたっている。星々の沈む夜の海は透明度を増し、ただただ静かに揺れている。自転車を引きながら坂道をのぼる。丘の上から見下ろす。町並みは、街灯ばかりが目立っている。自転車にまたがり、坂をくだる。山に囲われた町から、ビルの立ち並ぶ街へと川となって運ばれていく。風のようで、水のような闇をぬるぬると縫って伝う。ひと気は皆無だ。世界が拓けていく。滅多に足を運ばない地域まできた。昼間は大学生が大名行列のように行きかっている。コンビニがいくつか潰れ、テナント募集を訴えている。こころなし、ほかの店舗も活気がない。新しいビルはそれでも幾つか建設中だ。新陳代謝、とつぶやく。中心街までくると、さすがにぽつりぽつりと通行人を見かけるようになる。たいがいが男女の組み合わせだ。大学生だろうか。寄り添うふたりを見かけるたびに、ケッと思う。風のようで、水のような闇をぬるぬると縫って伝ううちに、すっかり泥をまとってしまった。夜に沈む街は、そらの汚れを池のように溜めている。天に近づけば薄まるだろうか。こんどは山へ向け、坂道をのぼる。ぬったぬった、身体が重い。限界まで泥を濾し、集め、重量を増したところで丘のうえから一気に家へとくだっていく。さらさらとそらの泥が抜けていく。家に着く。四時。このまま日が昇らなければいいのに。思いながら、町に溜まった汚泥はみなの見ている夢かもしれないと想像し、開けていく夜の帳の抜けていくような色彩をこの身いっぱいに吸いこんでしまいたい。鍵を開け、戸をくぐり、靴を脱ぐ。泥のようだと思う。なにもかも泥のようで、夢のよう。風のようで、水のよう。おはよう。おやすみ(おかえり)なさい。きょうはどこに行って遊びますか?


773:【出会い系で泣かせたい妹と出会う三月の話】
もちオーレさんのマンガ「出会い系サイトで妹と出会う話」を読んだ。めっちゃ興奮する。性的に。百合なのだけれども、これはGLとしてもBLとしてもすぐれものだ。キスのえっちなマンガはいいぞ! このひとのマンガは作者買いしたくなる類のやつだ。どことなーくクール教信者さんと似た香りがするぞ。あとは「私は君を泣かせたい」も買ってきた。いいコを演じる性格のわるい女の子、好きなんだ。いっそ性格のわるい女の子が好きかもわからんぞ。言うてもこういうマンガの性格わるいなんてたかが知れていて、どのコもふつうにいいコなのだけれどもな! あとはそうだなぁ、三月のライオンを買ってきたけれども、これはここぞというときのために読まずに温存しときます。コレ、魔法のオクスリだからね。キメるとやる気ボルテージがマックスになるねんで。たまーにいくひし関西弁モドキになるけど、ぜんぜん関西とは程遠いとこにおるぞ。似非っちゅーやつやんな。あと再三になるけれども、大沢やよいさんの「2DK、Gペン、目覚まし時計。5巻」が書店さんにないねーん。どうしてなの。無慈悲なの。ひどい。缶乃さんのマンガ「あの娘にキスと白百合を最新刊7巻」も入荷してないってなんなのー。最新刊でしょ、ヒット作でしょ! 大型書店にもないってどうなってんの、田舎をバカにしとんのか! 品薄か! 売れてんのか! よいことだ! あ、うん。よいことだ。おもしろい本が売れている。よいことだ。うんうん。待つよ。いくらでも待つよ。たくさん刷って、田舎にも配ってちょ。おねがい。


774:【知識ではない】
知識を結びつけることだけが思考ではない。知識と知識のあいだにある隙間を見つけ、そこに合うピースを探すと、おのずと、隙間が広がりを帯び、もうひとつの世界を見せてくれる。


775:【同じジャンルのひと】
いくひしのなかで成人向け漫画家さんのディビさんと、「堀さんと宮村くん」で有名なHEROさんは同じくくりです。たぶん同意はされないだろうなってわかってます。でもなんかわからないけど、同じ匂いがするというか、世界観が同じ方角を向いているというか、読んでいてただひたすらに落ち着くのです。セリフ力の高さは、ベクトルこそたがえど、おふたりともずば抜けて異次元です。同化して融け合いあいたいと思うような、思った時点ですでに融けはじめているみたいな、ふしぎな引力のある作品ばかりをつむいでくれます。HEROさんに至っては、ほとんどすべての作品をネット上に無料で公開していたりして、作品の世界観だけでなく、技巧だけでなく、そうした姿勢がいくひしの骨格の一部になっていると思います。2010年の冬頃に、初期作をつくっていたいくひしが、創作活動を一時中断して部屋にひきこもり「堀宮」を読み漁ったあの時間は、処女作をつくっていたときと並んで、人生のうちでもう味わえないだろうと思えるほどにとくべつな時間です。おもしろいとか、すごいとか、そういう次元では語れない、ほんとうにとくべつな物語をつくりつづけてくれる、たいせつなもうひとつの故郷そのものです。たまに帰ることで、じぶんという輪郭を再認識できる、じぶんのなかにある初心を振りかえれる、タイムマシンじみた魔法が詰まっている。いくひしのわるい癖なのですが、本当に真実じぶんのなかに取りこんでしまったものは、身近に置いておきたくない、という衝動がありまして、HEROさんの著書を長らく購入していなかったのですが――同じ理由で攻殻機動隊のDVDも未購入のままなのですが――2017年10月01日の午前05:39、きょうはまずHEROさんの短編集をぜんぶ揃えてこようと思います。そろそろいくひしも進化せねばならぬぞ、と感じているきょうこのごろなので、まずはじぶんのなかにある根源を見つめ直そうと思います。


776:【味方】
時代に追いつかれるってぇのは俺にとっちゃあ、時代が味方をしてくれてんのと同義だ。だが味方なんざなんの腹の足しにもならねぇ。追いつかれたら終わりなんだ。解るか?


777:【なかった】
うわーん。HEROさんの個人作品集が一冊しかなかったよー。九冊目の「夜明けはキズのあと」だけしかなかった、雑誌連載作品の「雨水リンダ」の一、二巻を代わりに買ってきたよー、思わぬ発見だったよー、うれしいよー。うわーん。



778:【Chris Brown - Privacy】
すごいイイ曲だなーって思ってたら歌詞が笑えるくらい下品だった。タイトルからしてサイコーだ。


779:【やるべきこと】
組織のちからを借りずに創作活動だけで食べていけるようにするために、こなすべきこと。ひとつ、作品の量産化。とにかく食い尽くされないだけのメニューを揃えておく必要がある。無料バイキングを開いてもカレーとハンバーグしかなかったら、いちどの来店でリピーターは見込めない。ふたつ、独自のプラットフォームの建設。企業の開いたWEBページではなく、じぶんだけの受容体をネット上に構築しておく必要がある。専用のメッセージ物質が集まるように工夫していこう。みっつ、宣伝。こればかりはいくひしの不得手とするところだ。得意とするひとを雇うほかない。或いは、宣伝しないことで宣伝とする手法を編み出すほかない。隠れ家的なお店はけっして隠れてはいない。本当に隠れてしまったら見つからないだろう。同じように、宣伝しない系の宣伝方法を試していくのがよさそうだ。どうすればよいのか。まずは、何を媒体に伝えていくのか、回路を構築する素材を見極めるところからはじめるほかない。マスメディア、ネット、雑誌、広告、これらはすべて除外する。では何が残る?


780:【無名の効用】
無名であることの利点はただひとつ、そこに付加価値がないことだ。つまり、評価という付加価値がないことが、付加価値をつける側にとっての最大級のメリットになる。何かを仕入れ売る側にとってもっとも得難い信用とは、ゼロから価値を見出した、という実績なのである。お膳立てが揃ってから見出していたのでは遅いのだ。(言ったら底が浅くなってしまうことなんで言っちゃうの? ポンタンなの? アンなの?)


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参照:いくひ誌。【601~610】https://kakuyomu.jp/users/stand_ant_complex/news/1177354054883501660

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