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誰でも見られるようにした、ぼったくり宿のこぼれ話です。
書籍発売から一カ月近く経っているので、宣伝です。
今回は人形達のやり取り。
ではどうぞー。
人形達の見る夢は
「ルチア姉様。マスターはまたここに来てくださるでしょうか?」
眠り姫チームのリーダー、レオニーからそんな事を聞かれる。
少し前、少しかしこまった場所に着ていく用の服が欲しいと言っていたマスターに、レオニー達が作り貯めておいた服を見せた。
その時のマスターの態度が、レオニー達の想定していたものとは違ったので、不安なのだろう。
……確かに、あの時のマスターは私の目から見ても引いていた。おそらく、レオニー達が作った服の数に。
でも、それをここで口にするのは野暮というもの。また普段着ているものとは違う系統の服が必要になれば、訪問してくれるだろう。
「必要と判断なさったら、マスターはいつでも来てくださるわ」
「そう……ですよね。私達のマスターですものね! では、その日が来るまで、倉庫の服を増やしておきます!」
言い方が悪かったのだろうか。うまくレオニーに伝わらなかったようだ。
眠り姫チームは、糸紡ぎから機織り、服や布を使った小物の仕立てまでは請け負っているチームだ。
当然、マスターが普段着る服も彼女達が作っている。ただし、マスターの好みの服は、眠り姫達にとっては不評らしい。
彼女達は、マスターにはもっと可愛い格好をしてほしいそうだ。そう、アイドルのスイートロリータのように。
一度、マスターがスイートロリータを見てこぼした事がある。
『ゴスロリって、見ている分にはいいけれど、着ようとは思わないんだよねえ……観賞用だわ、あれは』
つまり、スイートロリータのような格好をする気はない……という訳だ。
これは、レオニー達に言っておいた方がいいのかどうか。
少し悩んで、言わない事にした。彼女達も、自分でマスターから聞きたいだろう。
マスターの服を作る際、色々要望は聞くのだから、その時にでも確認すればいいのだ。
それにしても……
「あの倉庫の服、相当な数だと思うんだけど……まだ増やすの?」
「何を言うんですかルチア姉様! いつ何時マスターがどのような服を必要とするかわからないんですよ!? 現に、ついこの間もワンピースをお求めだったじゃないですか! あらかじめ私達が作っておいたからこそ、その場でお渡し出来たんです!」
確かに。それはマスターも助かったと思っただろう。そこは疑っていない。
でも、無断でマスターの服をあれだけの数作っていたとは知らなかった訳だから、マスターが驚くのも無理はないと思う。
しかも、大半はマスターの趣味に合わなかったようだし。実際マスターが選んだのはシンプルなワンピースだった。
それも、レオニー達にとっては不満らしい。
「マスターはもっと着飾るべきなのです。そうは思いませんか? ルチア姉様」
これには、何も答えられない。レオニーの気持ちも理解出来るけれど、何よりマスターの考えを知っているから。私達にとって、最優先すべきはマスターだ。
大体、普段のマスターの服装を見ていればあれを選ぶのは当たり前だと思うのだけれど。
その後、レオニー達にはマスターから新しい仕事を任された。敷地にいる冒険者を対象とした「既製服」の製造、販売である。
既製服とは、ある程度絞ったサイズであらかじめ服を作り、そのサイズにあった顧客が購入するというもの。
服とは、サイズを測って仕立てるものだと思っていたから、最初聞いた時にはびっくりした。
けれど、個人に合わせて作るより、確かに手軽だし大量生産にも向いている。少ない手間で多くの製品を作れるという事は、単価を下げられるという事。この敷地ではあり得ない程安価に服が買えれば、飛びつく客もいるだろう。
マスターは、そこに更なる付加価値を付けるのだとか。その為には、アイドル達の協力が不可欠だという。
その一環として、洞窟ダンジョンと呼ばれる奥のダンジョンにある、アンデッド層に向かうという。
それも、アイドル達とマスターだけで。これはいけない。承服しかねる。
マスターには、安全性の為ログハウスに残っていただき、アイドル達の護衛は私とセレーナ、ハンターチームで行う事を提案した。
でも、アンデッド層はマスターでもたやすく敵を倒せる階層。どうしても首を縦に振ってはくれなかった。
結局、マスターも同行する事に。それにしても、写真集とは、一体どんなものなのか。
それとレオニー達が作る既製服に、どんな関係があるのか。
訊ねても、マスターははぐらかしてばかり。「すぐにわかる」と言われたのだけれど、本当だろうか?
……いけない。マスターを疑うなど。でも、マスターはお人好しだから、誰かに騙されていないか心配。
だからこそ、私達がしっかりと見ておかなくてはいけないのだ。これからも、気を抜かないようにしないと。