絵描きという十数年来の趣味に先日いったん見切りをつけたところ、新たな創作欲のはけ口として、小説という世界に俄然興味が出てきました。
過去にも、仲間うちの手慰みでちょっとしたものを書いたことはありました。しかし、この媒体に正面から取り組んでみるのは今回が初めてです。
いま進めているのは『春めく』と題する一本。
昭和初期の東京を舞台に、孤独を抱えた男女が出会い、心を通わせていく物語です。もともとスノッブな文芸趣味の習作として始めたものですが、根が歴史オタクということもあり、結局は激動の時代ドラマに発展していきます。
歴史ブログの運営を通じて、当時の人々の暮らしや息づかいに触れてきました。しかし、ノンフィクションだけでは表現しきれないその時代のにおいと、一方で 時代を越え普遍的な「人の心の揺らぎ」のようなものとがある…と日頃から考えています。
その両方を同時に伝えてみたい——そんな思いで、小説という形式を選びました。
そして、もう一つの執筆動機は、創作をめぐる現状への小さな反発です。
台詞で全てを説明し、単純でスピーディに「わかりやすさ」を追求する作品がもてはやされる昨今、個人的にずっとモヤモヤとしたものをかかえてきました。
もちろん、それらを全否定したいわけでは毛頭ありません。しかし、川端康成や三島由紀夫の小説のしっとりとした美しさ、小津安二郎や成瀬巳喜男の映画の抑制的な人生の機微——そうした「失われゆくもの」の良さを、現代の人に、そして後世に少しでも伝えたい。おこがましいですが、そんな気持ちも入れています。
全三部構想で、現時点、第二部まで掲載済み。第三部(完結編)も脱稿済みですので、推敲と最終調整の状況に応じて順次アップしていきます。
あくまでもヘタの横好きにすぎませんが、もしおつきあい&お楽しみいただけましたら、嬉しく思います。