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バレンタイン特別更新14

別面:人外ヒューマンエラー





「む。連絡途絶、であるか」

 『アウセラー・クローネ』のメインメンバー5人うち4人が出撃する、という状態で、1人クランハウスに残っていた|Sacerdos《サセアード》。これは留守番という意味もあるが、そもそも「第一候補」あるいは大神官と呼ばれる事がほとんどである彼がイベント空間にいっても、出来る事がほぼ無いからだ。
 それなら、実質の総力戦に合わせて拠点の守りの要になった方がいいだろう、という事で、特殊な空間でも断絶される事なくやり取りが出来るようになった掲示板を見ながら、粛々と日常業務をしていた訳なのだが。

「流石に異世界に行くと、大神の加護も届かぬであるからなぁ……。それと同程度の強度がある結界か空間のズレを用意されれば、連絡が取れなくなるのはままあるのであるが」
「直前の書き込みから推測できる状況的に、赤地に緑色ではないレイドボスが出現したと思われます」
「で、あるな。……もっとも、流石に本命が出てきたとは思えぬであるが」

 もちろん状況は理解している。ほぼストーリーボスに対する総力戦状態である。これで倒せなければどうしようもないか非常に特殊なギミックがある、そういう戦力がイベント空間に突っ込まれ、司令部の指揮の下で動いているのだ。
 その状況で、連絡の途絶。つまりはステージ遷移が起こったという事だろう。そしてそれは大体の場合は「ボス戦」の発生を意味して、それが赤地に緑色で無いのであれば、黒地に青色の、本命あるいは本体を示す何かが出現した、という事だ。
 なのだが。|「第一候補」《Sacerdos》も、初日の通常状態の時には参加していたし、公式マスコットではあるのだから、時間加速中は参加していた。そしてその時、出来る事はやっていたのだ。

「あの空間は、読み方が分からないゲートを目印に、空間の裏側に何らかの柱があり、その柱の根元に元凶が居る構造をしているであるからなぁ……」
「あぁ、仰っていましたね。しかもその元凶は、恐らくだが神かそれに非常に近い何かであるとも」
「うむ。まぁだから感知できたのであるが」

 そういう探知はしていたのだ。まぁ領域スキルでどうにかなるものでもなく、あまりにもあの空間特有の法則が強くて奇跡を願うのもままならず、だから今回は出来る事が無いな、になって、今留守番しているのだが。

「一応、柱というのは封印では無い筈であるから、取り除いて邪神が復活した、等という事にはならぬと思うのであるが……しかしそれなら、何が居るのだ、という話であるしな」
「だから文献を探しているのでしょう」
「で、あるな」

 とはいえ、そうやって探して出てくれば苦労はしない。
 一応「第一候補」は、そういう風にある意味神と縁が出来た状態であれば、その神に関する情報が手に入りやすくなる補正がある事を知っている。だからせっせと集めてきた文献を見返して、それっぽい神に関する情報が無いかを探しているのだが。
 日常業務をしながら調べものをしていた「第一候補」。そしていつものようにその作業を手伝っていた元『本の虫』組のパストダウンだが、話がそこで一段落したところで、ちょっと首を傾げた。

「ところで大神官様。確かイベントで気付いた事は自分で共有すると仰っていましたよね?」
「うむ? うむ。それぐらいはしなければな」
「ですが先程の、イベント空間における構造の話。私は掲示板上で見た覚えが無いのですが」
「…………、そうであったか?」
「えぇ」

 否、首を傾げたというか、恐らく「第一候補」が忘れている部分をつついた。ぴた、と動きを止める「第一候補」。
 すっとメニューを操作し始めたのは、自分の書き込みを探しているのだろう。何しろ、イベント空間の構造に気付いたのは時間加速の最中だ。その後も多少時間があって全員あれこれ動いていたのだから、書き込んでいれば共有は出来ている筈である。
 の、だが。その、どう考えても重要な書き込みは、クランメンバー専用掲示板のどこにも無かった。

「…………すまぬ」
「現在は通信断絶中ですが、今すぐ素直に書き込んで後程怒られましょう」
「うむ…………」

 しおっとしながらも、パストダウンに言われるままにその情報を書き込む「第一候補」。もちろん反応は無い。何故ならそれに反応する相手は、全員通信断絶中でその書き込みを見れないからだ。

「とりあえず情報は何でもまず私に仰ってください。そして私が全体への共有を担当します」
「う、うむ……頼んだ……」

 とはいえ、理詰めでミスの重さを指摘してくる「第三候補」と情報に対する責任をざくっと刺してくる「第五候補」には間違いなく怒られるし、流石に「第四候補」と「第二候補」も一発ずつぐらいは追撃してくる可能性が高いだろう。
 もちろん本人に悪気はないが、だがそれはそれとして、パストダウンが圧をかけるのも致し方なしだった。何しろ、悪い方の実績がちょっと積み上がり過ぎているので。

※02/23一般公開予定

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