番外編:のんべん太郎の胃痛5
「こういうとこはほんとあいつ尊敬するわ」
何の事かっつーと、天秤の神マギスライブラバランサの神殿に襲撃があった事と、それに乗じたシトシ達の誘拐(未遂)があった事を伝えたら、その場にいた人外組以外の全員が地下に突撃しようとしたのを止めるのに夜までかかったからだ。
ウィッツの言いくるめ力はほんと高ぇな……。と思いつつ、相変わらず襲撃が行われている中で交代で休憩。あーくそ、城の自分の部屋のベッドで寝るんだった。
でもって翌日は、もう止めようがねぇ。身代金の取引の為に動くからな。いやまぁちゃんと無力化用の武器も持ってるし、若旦那と若旦那のとこの騎士は対盗賊戦も慣れてるから、無力化して捕縛っていうのも問題無く出来るだろうが。
「そんじゃ、クリスール、ツルスゲ、アドレラ、防衛は頼んだぞ」
「もちろんです」
「お任せ下さい」
「頼まれました」
「でもって、ツェリンは念を押しておくが、全員生け捕りが目的だからな。特に御使い(プレイヤー)は。出来るだけ傷なく穏便に捕まえるんだぞ。でないと、こっちにも非があった、って形になって減刑が入っちまうからな。どんだけ腹立つ馬鹿でも、最低限命は残せよ?」
「はーい」
一応念の為、防衛に残る神官と、一緒についてくることになったツェリンには釘を刺しておいたが、これ本当に大丈夫か……? と一抹の不安を抱いてしまったのは、まぁ仕方ねぇな。あんまりにも物騒な方のやる気が高すぎる。
流石にちょっとは発散させないと逆にヤバいか……? と思いつつ、指定されたルートで指定された場所へと移動する。身代金を支払いに行くというルビが振られている文章は、特別な商品を購入しに行く、だからな。
つまりはお忍びの貴族として動くって事だ。つまり移動時間がかかる。だからまぁこれは仕方ねぇんだが。
『――こちらウィッツ、通信範囲を拡大中。聞こえてたら応答願います。誰かいる?』
「ウィッツ!?」
『あれ太郎さん。探しに来れるようになった?』
「あー、そうだがそうじゃねぇ。手短に説明するからちょっと聞け」
その移動をして、もうちょっとで辿り着くってぐらいのタイミングで、まさかウィッツと連絡が取れるようになるとは思ってなかったが。一応見た目は護衛って事で若旦那と同じ馬車に乗ってた訳だが、勢いよく立ち上がって天井に頭ぶつけてたからな。大丈夫か? 馬車が。
こっちの経緯を説明して、シトシとシャギーとジュエル達の行方について聞くと、シトシとシャギーは合流済みだったようだ。これは一安心だな。まぁジュエル達が大変な事になっているのも確定した訳だが。
なおかつウィッツ達は、今まさに俺らが向かっている場所に向かおうとしているらしい。だから、そのまま人外組も含めて合流する事にする。おチビがウィッツを探せるって分かったら、紫陽花が音頭を取って待機してくれてるからな。
「従霊騎士組は再誘拐組の捜索をしているが、そういう訳だからウィッツ、どうにかこっちに到着したらおチビを呼べ。それで全員合流する」
『その到着するべき場所が分からないんだけど。こっち地下水路だよ?』
「強制労働させられてた分霊(プレイヤー)込みの集団がいた場所までは辿り着いたんだろ。かなり派手に騒ぐから、その音やら振動やらを辿ってくればいい」
『どれだけ暴れるつもり?』
ここで若旦那に視線で確認を取ると、まーいい笑顔で、「無機物は全部壊して構いませんな!?」って言い放ちやがったよ。止まる気が微塵もねぇ。
『うーん暴れるつもりしかない』
「まぁ若旦那と騎士組より、他の神官組から諸々頼まれたツェリンの方がこえーんだが。シャギーの話聞いたら納得しかないとはいえ。命は残せよ? とは釘刺しといたが」
『それはそう。釘刺しありがとう』
という事を話した所で、馬車が止まった。あーもー、若旦那がすっさまじくやる気になってらぁ……。
ここから他の騎士とツェリンにも話を手短に共有する以上、全員この状態になるのは分かり切ってるんだけどな。そして人外組がウィッツに合流するって事は、そのまま俺らの位置を確認して、挟み撃ちなり証拠集めに行くなりするだろう。
まぁともあれ、ブレイブがいるのは確定、ウィッツの話じゃティグマスもいるのはほぼ確定、追加で集団になってる御使い(プレイヤー)がいるらしいから、ここからはたぶん何とかなるな。
…………何とかなる、よな? 何か、「天秤の神マギスライブラバランサの試練」があるとかって聞こえたが。
終
※ 2026/09/01に一般公開予定