マズイ、と思った時には遅かった。
そいつは中級鬼と呼ばれる妖魔だ。
筋骨隆々の体躯、2メートルを優に超える巨体が悠々と接近してくる。
「春野くん!」
「はい!」
春野君が使役する精霊に攻撃を命じている。
風の精霊から繰り出される無数の風弾は鬼の体に命中する。
鬼は嫌がるように両腕を交差させた。
「いける!」
両手を交差させた中級鬼が怯んだと思ったのだろう。
彼は油断している。
「いやっ――」
中級鬼のプレッシャーが膨れ上がった。
歯がかじかみそうになるのを堪え必死に叫んだ。
「――避けろッ!!」
本能のままに俺は飛びのき構えた。
以前に出会った中級鬼以上のプレッシャーが突進と合わさり俺を襲う。
鬼の進路が彼を狙っていた。
俺は、俺の役目は鬼の突進を防ぎ彼らを守ること、それが俺の仕事だ。
(ぐっ……動け!!)
動けない。
彼を守ろうとした風の精霊が弾かれても俺の両脚は鉛のように動けなかった。
情けない。
恥じた。
(くそったれ!!)
目の前でまた何もできずに人が死んでいく。
そんなことを許さない為に俺はこの組織入ったはずなのに。
また何もできないのか、俺は。
「っ!?」
消えた。
鬼の突進になすすべなくミンチにされるはずだった春野君が消え、いつの間にか鬼の背後へと移動している。
「ガアアアア!!」
怒りの咆哮を上げて鬼が振り向きながら拳を振るった。
常人にはそのプレッシャーに、中級鬼の威圧に足が動かなくなるはずだ。
しかし彼は何事もないかのようにその拳を躱していた。
「ばかな……」
鋭い銀線が走り青い鮮血が舞う中を彼は悠然と立っている。
ありえない。
それになんだその表情は。
「春野……」
君は一体、何者なんだ?
