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もしかしたらこいつ何回までダメージ無効とかそんな魔法使ってないか?

 今描いてる話。絵は今描いてる話の挿絵
 国境話プレビュー↓


 ミハエル=シュピーゲル=フォン=フリードリヒは、金の刺繍が施された黒い外套を翻し、退屈そうに欠伸を噛み殺した。
「ちょっと、四対一?  せめて四対二くらいにしてくれないか。わたしの腰が持たないよ。もうワシは87歳なんでノオ。うぇっほんうぇっほん」
 そんなバカな。
「ふふっ、あなたたち全員でもいいけど? 全部狩っちゃうから!」
 ヤヌが短剣を小気味よく回しながら口角を吊り上げる。その瞳には、獲物を追い詰める快楽だけが宿っていた。
「済まんが、それをするには君たちでは力不足だ。
 役不足じゃあなくてな、純粋に力不足だ」
 ミハエルは、短剣の軌道を指先で弾きながら、涼しい顔で言い放った。
「いってくれるじゃん、おじさん!」
 スーが地面を蹴り、影のような速度で懐へと飛び込む。だが、ミハエルはそれを無視するように、背後に声をかけた。
「フレッド! 入ってくれ!」
「おっけおっけ! 待たせたな!」
 黒い騎士鎧を纏ったフレデリック=ローレンスが、風を切るような足取りで割って入る。彼の両手には、炎を滅ぼす氷の滅炎剣と、氷を滅する炎の滅氷剣。二振りの剣が、交差するたびに火花と冷気を交互に放つ。
 戦いが加速した。カイムが咆哮する。その男が地面を割る勢いで突進してくる。同時に、ヤヌとスーが左右から「魂の影」となって回り込み、ミーズーの指先からは相手の足元を瞬時に氷結させる魔力が放たれた。
 これは、闘技場で何千もの戦士を葬り去ってきた、完成された「ハメ技」の定石だ。盾が視界を奪い、暗殺者が死角を突き、魔法が自由を奪う。
「ふん!」
 ミハエルは、迫り来るカイムの盾の衝撃波を、あえて地面の砂利を蹴り上げることで相殺した。
 舞い上がった砂塵が、カイムの視界をほんの一瞬だけ鈍らせる。
 その隙を見逃さず、ミハエルは身体を極限まで捻り、双子の刺客が放ったダガーの軌道を紙一重で回避した。
 この時、ミハエルは思い至った。
(盾。もしかしたらこいつ何回までダメージ無効とかそんな魔法使ってないか? ネトゲの対人戦でよくある。リアルではあまり見ないが。アサシンの双子が勢い良すぎる。全力攻撃(防御を考えてない動き)だぞこれ)
 ミハエルはそう思い、砂利を蹴り上げる。
 ダメージ無効がミハエルの予想通りなら、本気の攻撃ではなく、砂利でも適当にぶつけさせて無効回数を無駄に消費させるのが効果的だ。 
「なあに~!? 悔しくて砂利蹴り上げてるのぉ~?」
 双子の片方がミハエルを煽る。
「ああ。悔しいね!」
 相手に乗るミハエル。
 足元の氷結魔法陣が広がる。ミハエルは霊波動を足裏に集中させ、接地面の温度を瞬間的に沸点まで引き上げる。雪が蒸発し、拘束を無効化する。





「フレッド!」
「りょーかい!」
 ミハエルが開けた一瞬の隙間を、フレデリックが突く。彼はヤヌとスーの背後に回り込み、掌から目に見えない空気の振動を放つ。
「甘いね! 風のバリアー!」
 ヤヌが短剣を交差させ、風の壁を構築する。しかし、フレデリックの振動は物理的な衝撃ではない。それは、対象の内側にある「平衡感覚」を直接揺さぶる魔導の響きだ。
「そっちよ!」
 ミーズーが鋭い声で警告するが、もう遅い。そして物理攻撃とも攻撃魔法とも言えない威力なので、盾の野郎カイムのダメージ肩代わりスキルの管轄外である。
「ぐっ!」
「あっ!」
 双子の動きが、わずかに、しかし致命的に乱れた。
 精鋭アサシンにとって、平衡感覚の喪失は死を意味する。
「くっそ、うざい!」
「気に入らない! ハメ技に対抗する気!?」
 ミハエルはその「魂のひび割れ」を見逃さない。一足飛びにヤヌへと肉薄し、その脇腹に寸勁を叩き込む。
「ゲホッ!」
「わたしにろくに剣すら振るわせてくれないでやんの。ティルナノグのキングズリー・ヘンリー・エガートン =ケテル。あの神を気取った老人の方がずっと強かったぞ。それにヘスラーとアルヴェロの方が」
「ぐぼっ!」
 ヤヌが蛙のような声を上げ、雪原を転がる。スーが取り乱して襲い掛かるが、フレッドはスーの懐に潜り込み、その喉元に鋭い指圧を施した。スーは声を詰まらせ、ダガーを雪の上に落とす。
「ミーズーが氷の槍準備してるぜ! 構成見たわ、氷の槍!」
 フレッドが指摘し、ミハエルの背後から鋭利な氷の槍が襲う。
「あぁ……遅いな。呪禁道は明らかに魔法よりも出が速いし」
 ミハエルは背を向けたまま、その槍を背中の霊気の膜と筋肉で受け止める。彼の霊波動が肉体を鋼鉄以上の硬度に変えている。その反動を利用し、ミハエルは空中で反転、足に霊気を纏わせた強烈な回し蹴りを放った。

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