• 異世界ファンタジー
  • エッセイ・ノンフィクション

ミニスカ3人組

カイアス出身勢だけど今まで話してなかった人達、
広いし人口多いからね。
下の絵、左からリディア=ド=フレージュ、クロディーヌ=ド=ロアン、天馬蒼依。
プレビュー↓

ヴァーレンス王国の公爵領、庭園に面したテラスでリディア=ド=フレージュが書類に目を通していた。隣には銀髪を後ろで束ねたクロディーヌ=ド=ロアンが控えている。
「リーダー、昨日の市場の売上報告、確認終わりました」
「ありがと、クロディーヌ。やっぱりあなたの計算、早いわね~」
リディアが書類を置いて伸びをすると、タイトな黒いスカートの裾が風に揺れた。昔と違い、もう岩の上でポーズをとるような真似はしない。だが、まだ少しはしゃいだ動作の残滓がある。
「なーんか、昔を思い出すわね」
「え?」
「いや、初めてミハエル卿に会った時のこと。あんたもいたでしょう、あの岩場で」
クロディーヌの頬が赤くなる。今でも鮮明に覚えている。ミハエル=シュピーゲル=フォン=フリードリヒの青い瞳が、初めて自分を見た瞬間。盗賊まがいをしていた女たちを、あんなにあっさりと助けてくれた男。
「懐かしい、ですね」
「懐かしいというか、恥ずかしいというか……」
リディアが苦笑いを浮かべた時、庭園の向こうから複数の足音が聞こえてきた。
「おー、いたいた! セネシャルさんとその補佐!」
小柄な影がテラスに飛び出してきた。ミニ巫女装束に身を包んだ天馬蒼依だ。彼女の後ろから、水鏡冬華、サリサ=アドレット=ティーガー、そして漆黒の翼を持つブラックヴァルキリー・カーラが続く。
「あら、蒼依ちゃんたち」
リディアが立ち上がって頭を下げた。セネシャルとしての立場をわきまえた動作。だが、目の前の相手は公爵の妻たち、あるいはその友人たちだ。堅苦しすぎるのも失礼だ。
「あんたら、ミハエルさんに出会ったのわたしのグループより半年ほど前だったんだっけ? セネシャルのリディア?」
天馬蒼依がそう言って、小さな身体で大きく腕を組んだ。態度はでかい。リディアは苦笑いを浮かべた。
「そうですね。天馬さんたちがヴァーレンスに来るより少し前に、わたしたちはカイアスから来たんです」
「へえ、じゃあ話聞かせてよ。どうやってミハエルさんに拾われたのか、詳しく!」
 天馬蒼依が目を輝かせる。
 サリサが肩をすくめた。
「わたしは知ってるけどね、現場にいたし」
「サリサ、口挟まな~いで」
「あら、事実でしょ」
 水鏡冬華が腕を組んでリディアを見た。セーラー服の袖が風に揺れる。彼女もあの時、現場にいた一人だ。
「確かに、興味深い話ではあるわね。あの時のミハエルの反応、今思い出しても頭病めそう」
「おい、冬華、わたしのことバカにしてる?」
 テラスの奥から声がした。ミハエル=シュピーゲル=フォン=フリードリヒが出てきた。黒いコートを肩にかけたまま、書類の束を持っている。
「公爵様」
 リディアとクロディーヌが一斉に頭を下げた。ミハエルは手を振ってそれを止めた。
「いいって、今は私用だから。……それで? 昔話でもしてたのか」
「はい。蒼依ちゃんが聞きたいって」
リディアが答えると、ミハエルの表情が少し緩んだ。
「なるほど。じゃあ、当事者である私も混ぜてもらおうか」
 彼が椅子に腰掛け、リディアたちを促す。クロディーヌは少し照れながら隣に座った。
「じゃあ、話すわね」
リディアが一つ息をついた。


***


カイアスの荒野は、風が土の匂いを運んでいた。リディアは岩の上に立ち、タイトなミニスカートをはためかせていた。位置関係的に、向こうがやや上だ。彼女は片足を岩に乗せ、女らしいポーズをとる。
「うふふ、このリディア=ド=フレージュの手から逃れようとしても無駄よ。わたしたちの甘~い毒針は、なぁ~んにも逃がさないのよ、ミハエル卿」
演技が過ぎて、自分でも恥ずかしくなってきた。だが、部下たちが後ろで見ている。フローラ、カトリーヌ、エミリエンヌ、クロディーヌ。全員腹を空かせている。ここで引くわけにはいかない。
「おい! アンタ見てるでしょう、女は誤魔化しても分かるんですからね、そういういやらしい視線!」
鋭い声が飛んできた。水鏡冬華だ。黒髪を靡かせて、ミハエルの横に立っている。
「……あんた嫁複数もらっておきながら魔導PCはエロいものだらけだし……そんな、もう! バカ!」
「別腹、別腹」
ミハエルが真剣な顔で答える。視線はリディアのスカートあたりに固定されている。
「あなた……」
冬華の言葉が棘のように突き刺さったが、ミハエルは見るのを止めない。リディアは内心焦った。本当に見えているのか。見えているのかもしれない。でも、今は威勢を張らなければ。
「あ、何でも屋クレーヴの人だ。去年はハチの巣退治ありがとうございました~」
勇者ジェムズがのほほんと言った。リディアは顔をしかめた。
「ちょっと! 覚えていてくれたのはありがたいけど『何でも屋クレーヴ』ってちょっとダサい気がするからやめてって言ったでしょ! 『フローター・クレーヴ』とでも言ってちょうだいってあの時言ったわよね!」
「後気が向いたらピザ注文しますんでお願いします~」
「いや、あのね。あのね。それうちら『フローター・クレーヴ』に頼む……? なんでもやるとはいえそれぇぇは、普通にピザ屋さんに行くか、魔導携帯端末で注文するかでしょう……なんでわたしたちピザ屋さんの真似事しなきゃいけないの!」
「はっはっは!」
「笑うんじゃない勇者ジェムズ!」
ムキーと怒って地団太踏む。タイトスカートでこれは危ない。自分が相手より高い位置にいるのに。ミハエルの視線が熱い。
「フロートアイスだっけ。あんたらの依頼人てさあー」
サリサが口を挟んだ。リディアは抗議した。
「フロートアイスてアイスじゃないってば、わたしら。フローター・クレーヴ!」
「まあ、それはどうでもいいんだけど」
「いや、あんまよくないし」
無視されて、サリサが続ける。
「いいんだけど、リディア=ド=フレージュ? アンタに依頼した人わたしこの前始末したっぽいんだけど」
「……は?」
「始末って言うか逃げたけどあいつが違法に他人から強奪した金銭全部わたしが持ってるからアイツ生きてるけど支払い能力ゼロよ」
白目をむいた。プルプル震えた。つまりギャグ顔だ。サリサはバッグを開けて、中身を見せた。あの依頼主のバッグだ。見覚えがある。
「待……待って! お願い! わたしたち本当に食べる物もなくて困ってるの!」
「……だから?」
「だから、その、護衛とかどう? 街から街まで盗賊が最近出るのよね」
「さっきのあんたらも盗賊だったわよ」
「う……」
めげなかった。食い下がった。
「だ、だから、盗賊団が出たらわたしたちフローター・クレーヴが追い払ってあげるから何か食べ物部下に頂戴~わたしは最後で、いやなしでもいいからぁぁぁぁぁ! お願い、依頼が来なくて飢え死にしそうなのよ~……」
「わたしたち護衛いらんし」
「そんなつれないこと言わないで!」
「でも……」
必死だった。這いつくばるしかなかった。
「あ、あ、ああぁの、ミハエル卿?」
両腕でミハエルの足を抱きしめた。
「ちょっと! いきなり足に縋りつかないで! 歩いてる時にそれやられたら最悪顔蹴っちゃう!」
「わたしがその、あ、ああぁあ、あ、あなたをその、き、気持ち良くさせてあげるから、あの、その、部下に食べ物を…………お願いします……お願いします」
荒野で土下座した。土の匂いがした。屈辱だった。でも、部下がいた。彼女たちがいた。
「ん~、ん-。このカイアスっていう市民がどれだけ苦しもうが知らんぷりで徴兵はする、って荒れた国家の市民の現状特に君たちみたいな立場に置いやられている人。当然、君たち自身の情報でも構わない、その情報を1週間分の食事提供で交換。どう?」
頭を上げた。ミハエルの顔があった。真剣な、しかし優しい目をしていた。
「え?――え? ええ? そ、そんなのでいいの……?」
涙が出た。止まらなかった。
「まあ、あそこの君の部下? 君入れて5人かな? 食事は心配いらないでしょ」
「いらっしゃい皆! 作戦変更よ! 我らフローター・クレーヴはミハエル卿を守る任に移る!」


***


「……で、ヴァーレンスに着いて、貿易とか色々やってたら、公爵様に見初められてセネシャルになった、というわけよ」
リディアが話を終えると、天馬蒼依が大きく頷いた。
「なるほどなるほど~。で、サリサさんがいじわるしたわけね」
「いじわるじゃないよーー、事実を伝えただけ」
 サリサが肩をすくめる。ミハエルが苦笑いを浮かべた。
「確かに、あの時は情け深く振舞ったつもりだったが、今思えば少し強引だったかもしれんな」
「いえ、公爵様。わたしたちにとっては、本当に救いでした」
 クロディーヌが初めて口を挟んだ。声音が少し震えている。
「リディアさんが……あの時、わたしたちのためにあんな姿を晒して……わたし、一生忘れません」
「ちょっとクロちゃん! 恥ずかしいこと言わないで!」
 リディアが顔を赤くする。ミハエルが穏やかに微笑んだ。

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する