AIに和風ファンタジーを描いていただきました。
著作権的にどこかに引っ掛かるかもしれないため、
近況ノートに貼らせていただきます。
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霧の社(やしろ)と白き狐
山あいの村・霧ヶ谷は、名の通り一年の大半が薄い霧に包まれている。朝になると白い靄が棚引き、夜には月明かりさえ霞むほどだ。村人たちはそれを「山の息」と呼び、畏れと共に敬ってきた。
その霧の中心に、小さな社がある。苔むした石段を百段ほど登った先、杉木立に抱かれるようにして建つ古社だ。村では「霧守(きりもり)さま」を祀る場所として知られているが、誰もその正体を知らない。ただ、霧が濃い日に社へ近づくと、不思議と胸が静まるという。
——その社に、ひとりの少女が通っていた。
名を澪(みお)という。村の薬師の娘で、幼い頃から霧に敏感だった。霧が濃くなると胸がざわつき、逆に薄い日は落ち着かない。まるで霧と心が繋がっているようだった。
ある夕暮れ、澪はいつものように社へ向かった。霧はひどく濃く、足元さえ見えない。だが、澪は迷わない。石段の感触と、霧の流れが道を教えてくれる。
社の前に立つと、霧がふっと晴れた。まるで誰かが迎え入れるように。
その瞬間——白い影が、澪の前を横切った。
「……狐?」
影は社の裏手へと消えた。澪は胸のざわつきに導かれるように、そっと後を追った。
裏手には小さな池がある。霧が水面に落ち、静かに溶けていく。そこに、白い狐が佇んでいた。雪のような毛並み、琥珀色の瞳。だが、澪が息を呑んだのは、その尾が二つに分かれていたからだ。
「……霧守さま?」
狐は澪を見つめ、ゆっくりと頷いた。
次の瞬間、霧が渦を巻き、狐の姿が淡く揺らぐ。白い光が集まり、そこに現れたのは——白衣をまとった青年だった。髪は銀に近い白、瞳は狐と同じ琥珀色。
「初めて姿を見せるな。驚かせたか」
声は霧のように柔らかく、どこか懐かしい響きがあった。
「あなたが……霧守さま?」
「そう呼ばれている。名は朧(おぼろ)だ」
澪は胸のざわつきがすっと消えていくのを感じた。代わりに、深い安堵が満ちていく。
「どうして私に姿を?」
「お前は霧の声を聞ける。ずっと、こちらから呼んでいた」
朧は澪の胸元に手をかざした。そこから淡い光が立ちのぼる。
「お前の中には、霧の気が宿っている。人の身でありながら、霧と心を通わせる稀な者だ」
「……だから、霧が濃い日は胸がざわつくの?」
「霧が乱れている証だ。山が苦しんでいる時、お前はそれを感じ取る」
澪は驚きと共に、どこか納得していた。幼い頃から感じていた違和感が、ようやく形を持ったのだ。
「では、今日の霧は……」
「乱れている。山の奥で、古き封が揺らいでいる」
朧の表情がわずかに曇った。
「封が破れれば、霧は暴れ、村を覆い尽くすだろう。お前の力を貸してほしい」
澪は迷わなかった。
「私にできることなら、なんでも」
朧は静かに微笑んだ。その微笑みは、霧の奥に差す光のようだった。
◆
山奥へ向かう道は、霧が壁のように立ちはだかっていた。だが、澪が歩くと霧が左右に割れ、道を開く。朧が後ろから見守るように続く。
「霧が……私を避けてる」
「お前を主と認めているのだ」
澪は胸が熱くなるのを感じた。自分がずっと恐れていた霧が、実は寄り添ってくれていたのだと知ったからだ。
やがて、古い祠にたどり着いた。祠の扉は半ば開き、黒い霧が漏れ出している。
「封が……破れかけてる」
「澪。お前の力で霧を鎮めよ。私は支える」
澪は祠の前に立ち、深く息を吸った。胸の奥にある霧の気が、静かに揺れ始める。
——大丈夫。私は、霧と共にある。
澪が目を閉じると、霧が彼女の周りに集まり、柔らかく渦を巻いた。黒い霧が抵抗するように唸るが、澪の霧がそれを包み込む。
やがて、黒い霧は静まり、祠の扉が音もなく閉じた。
霧が晴れ、山に静寂が戻る。
「……終わった?」
「ああ。見事だった」
朧は澪の肩に手を置いた。その手は温かく、霧とは思えないほど確かな存在だった。
「澪。これからも、霧と共に歩んでくれるか」
澪は微笑んだ。
「もちろん。霧は……私の一部だから」
朧は満足げに頷き、再び白い狐の姿へと戻った。
霧の中、澪と白狐は並んで歩き出す。
霧ヶ谷の山は、今日も静かに息づいていた。
-- 終わり