Episode1『サラリーマン』
───黒い太陽が堕ちてくる。
「どう⋯⋯やら、⋯⋯はぁ⋯⋯ここまで⋯⋯のよう⋯⋯ですね」
逃げる者。心折れる者。抗う者。
迫り来る『死』を前にヒーローたちは三者三葉の行動を取ってはいますが、どれも待ち受ける結末は同じでしょう。
───まさかペルソナがここまでの力を持っているとは⋯⋯。
見誤ったと言う事ですね。
教え子たちに敵を侮るな、敵との力の差を見誤るなとアレほど口にしてきた私がこのような体たらくとは⋯⋯。
「私は、先に⋯⋯逝きます」
ですが、後悔はありません。総一郎⋯⋯貴方と共に戦えた事を誇りに思います。
できる事ならば貴方に最後まで付き従いたかった。貴方が取り戻す平和な世界を見てみたかった。
───総一郎⋯⋯貴方は私が死んで、泣いてくれますか?
「ふふ⋯⋯」
泣かないでしょうね。あっちの世界で最愛の女性を目の前で失っても、貴方は戦い続けた。想いを背負って戦っている貴方は泣いてる暇はない
そう言うに違いありません。
貴方とはかれこれ30年近い付き合いになりました。最初に出会った時の印象は悪かったのに、それが無二の友になるとは⋯⋯。
人生とは⋯⋯分からないものです。
「⋯⋯⋯⋯」
それと、
───最期まで一度も勝てませんでしたね。
同じ戦場を死に物狂いで駆け抜けて、何度も死にかけながら私は貴方の背を追った。一度はその背に追いつくも、貴方は直ぐに私を置いて先に行ってしまった。
付いてくるのが私の仕事ですか?サポートに徹するのが私の役目ですか?信頼してるからと後ろを見ないで走るのは止めて頂きたい。
少しばかり自分勝手過ぎますよ。
「⋯⋯⋯⋯」
───それも、今日で終わり。
先に参ります。ですが、貴方は直ぐには来ないでください。
人生を満喫して、大往生を迎えた後にでもこの戦いの結末を私に話してください。
それまで今度は私が先に行って待ってますから。
大丈夫です。最期に私よりも遥かに優秀なヒーローを残せました。
きっと貴方の力になってくれる。
「良き、人生でした」
───視界が黒く染まった。