『選ばれなかった9つの世界』の第1話PVを作ってみました。
30秒ちょっとの短い動画です。
作り始めてから完成まで、だいたい2日くらい。
今はAIを使えるので「作ってみようかな」で始められましたが、これ、少し前までだったら個人で気軽にやれる作業ではなかったんですよね。
同じようなPVをAIなしで作ろうとすると、たぶん最初に必要なのが企画と絵コンテです。
第1話のどこを映像にするのか決めて、
「会社帰りの進」
「雨の交差点」
「トラックが近づいてくる」
「白い空間」
「死後の受付」
「ガチャ」
「最後のイリス」
みたいに、30秒の中で何カット使うか決める。
しかも、ただ原作の場面を並べればいいわけではなくて、
「最初の3秒で何を見せるか」
「どこで場面を切り替えるか」
「どこまで情報を出すか」
「最後に何を残して終わるか」
みたいな映像用の演出も考えないといけません。
その次がキャラクターデザイン。
主人公の進なら、
26歳。
日本人男性。
普通の会社員。
黒髪。
スーツ。
ネクタイは少し緩め。
会社帰りに見えること。
みたいな情報を絵として決めます。
一枚だけならまだいいんですが、動画にするなら、別のカットに移っても「同じ人物」に見えないといけない。
正面、横顔、全身、表情、服装などを揃えた設定画を作って、それを基準に各カットを描く必要があります。
イリスや受付の人物も同じです。
そして背景美術。
今回なら、
雨の夜の日本の交差点。
道路。
横断歩道。
街灯。
ビル。
濡れたアスファルト。
トラック。
真っ白な死後空間。
受付の部屋。
ガチャの置かれた空間。
全部、誰かが描かないと存在しません。
その上にキャラクターを乗せます。
さらに、静止画をただ並べるだけではPVっぽくならないので、次は映像として動かす作業。
カメラをゆっくり寄せる。
トラックを近づける。
ライトを強くする。
雨を降らせる。
髪や服を少し動かす。
白い光を広げる。
人物を浮遊させる。
ガチャを動かす。
イリスの手を伸ばす。
ちゃんとしたアニメーションにするなら、それぞれに原画や動画が必要になります。
静止画を使った映像でも、After Effectsなどで人物と背景を分けて、カメラ移動や光、粒子、ぼかしなどを一つずつ付けていく作業になります。
それが終わったら、今度は撮影・エフェクト処理。
雨を自然に見せる。
ヘッドライトを光らせる。
道路に反射させる。
白飛びのタイミングを合わせる。
異世界側に光の粒を入れる。
画面全体の色味を統一する。
ここも専門の仕事として存在する部分です。
そして絵ができても、まだ音がありません。
声を入れるなら、まず声優さんを探すところから。
進役。
受付役。
声のイメージを伝えて、収録してもらって、音声データを受け取る。
録音環境によってはスタジオも必要です。
収録したら、ノイズを取ったり、音量を揃えたり、映像のタイミングに合わせたりします。
次にBGM。
既存素材を使うのか、作曲家さんに作ってもらうのか。
今回みたいなPVなら、
最初は不穏。
死後世界では少し静か。
ガチャから最後に向けて少し広がる。
という30秒の流れに合わせて音楽を考えます。
さらに効果音。
トラックのエンジン。
道路の環境音。
白く飛ぶ瞬間。
ガチャの機械音。
カプセルの落ちる音。
最後の光。
こういう音を探して、一つずつ映像のフレームに合わせて置いていきます。
そのあとようやく編集です。
各カットを並べて、
「ここは0.3秒短く」
「ここはもう少し長く」
「このセリフのあとに間が欲しい」
「最後のタイトルを2秒残そう」
みたいな調整を繰り返します。
タイトルも誰かが作ります。
フォント。
位置。
大きさ。
出てくるタイミング。
消えるタイミング。
全部決めます。
YouTubeに載せるなら、さらにサムネイルも必要。
人物の配置を考えて、タイトルを入れて、小さく表示されても読めるように調整する。
最後に書き出し。
解像度。
動画形式。
音量。
ファイル容量。
問題があれば、また編集に戻ります。
つまり30秒くらいのPVでも、昔ながらの作り方をすると、
企画、脚本、絵コンテ、キャラクターデザイン、背景美術、作画、アニメーション、撮影、声優、音声編集、BGM、効果音、映像編集、タイトルデザイン、サムネイル制作
まで必要になります。
しかも普通は、一人で全部やる仕事ではありません。
それぞれ別の人が担当している世界です。
もちろん、個人制作なら工程を簡略化する方法はあります。
それでも、絵が描けない人ならイラストを依頼して、動画を作れない人なら映像編集を依頼して、声が必要なら収録をお願いする。
少しずつお金と時間が積み上がっていきます。
今回やってみて一番面白かったのは、AIによって「作業が全部消えた」というより、
今まで別々の専門家に頼まないと形にならなかった工程を、作者本人がその場で試行錯誤できるようになった
というところでした。
実際、今回も一発で完成したわけではありません。
トラックが変だったり。
手がおかしくなったり。
キャラクターが違ったり。
音が大きすぎたり。
字幕が勝手に出たり。
何度も、
「違う違う、そうじゃない🐝」
をやっています。
でも修正して、見て、また直す。
それを繰り返して、2日でここまで来ました。
少し前なら、
「小説のPV作りたいな」
と思っても、
「いや、いくら掛かるんだこれ……」
で終わっていたかもしれません。
今は、
「じゃあ作ってみるか🐝」
ができる。
ここはかなり大きいなと思いました。
ということで完成したのがこちら。
『選ばれなかった9つの世界』第1話PV
▼YouTube
https://youtu.be/LTapSiB3r6s?si=ZmIqv3AhLwmSwyg_30秒ほどなので、よかったら見てみてください🐝