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シリーズ作品の小話

『トロイメライは鳴り止まない』

 このシリーズはすべて私が実際に見た「夢」が題材になっています。悪夢だったり幸福体験だったり、断片的なものもあれば長尺ではっきりと記憶しているものまで様々です。そういうものをメモとして残した手書きの夢日記がありまして、その一つ一つを膨らませて書いたものがこのトロイメライシリーズです。

↓最新作 ※以下ネタバレ?含む
https://kakuyomu.jp/works/16818792435674045107/episodes/16818792435674464546


 夢って本当に不思議ですよね。
自身の経験や記憶が投影されているような時もあれば、アニメや漫画でしか見たことのない異世界に迷い込んでみたり、今まで一度も経験したことがないような事を簡単にやってのけたりもします。

 今回最新作として書いた『宝償箱』ですが、これは半分ホント(当時は本当に宝飾店で働いていた)で半分ウソ(窃盗癖)の話です。
実際に見た夢では、勤めている店で自身が繰り返し盗みを働く姿が細切れに断片的に流れるという様な感じでした。ただただ映像としてそれを見ている、といった感覚です。自分が映っているのに、実際に馴染みのある場所であるはずなのに、まるで他人事のようにしか感じられない。でも盗みを働いた時の焦りや不安な気持ちはじわじわ思い出せる、というのが何とも面白いポイントです。

 夢の中では現実世界と同じように「自分がその出来事を体験してこう思った」と感じているのですが、夢から覚めて現実へ戻ってくると、他人がその出来事を体験してこう思ったというのを「私はただ見ていた」という風に、第三者視点での記憶が残ります。つまりは夢の中の姿が自分であっても「自分に見える別の人格が体験したこと」のように感じるのです。

 私の場合は、夢の中で自分が全くの他人に成り代わっていることもしばしばあります。それが人間でない場合もあります。でも夢の中では自分がその人として生まれてきたと実感していますし、何の不思議もなく過ごしています。現実へ戻っても夢で自分が成り代わっていた他人と曖昧になっていると言いますか…自分の中の別人格と記憶と感情だけは共有しているような感じですね。

 これは『明晰夢』に関連する話になります。明晰夢…つまりは夢の中で自我を保って自由に動き回ることができる覚醒した状態のことを言いますが、これができる人は全て自分の体験として処理するため最終的には現実世界と同じ一人称視点での記憶が残ります。
 例えば夢の中で自分が一匹のカエルだったとしましょう。それに対して、明晰夢が見られる人は「うわ、私カエルになってる!」と気がつける訳です。だから雨が降っても「これ夢で実際は濡れないし、何ならカエルの姿で池泳いでみようかな~」とか考えられるんですね。でも私は自分が元々人間であったことにすら気付けないので、夢の中では「雨が降って嬉しい」「冷たくて気持ちいい」と感じています。そして現実へ戻ってきた時、「カエルになった時って雨降ったら嬉しいし気持ちいいんだな」とその時感じていたことを思い出す訳ですね。改めて書いてみると本当に不思議です。

 夢日記をつけることで明晰夢を見やすくなる、と何処かで聞き実際に日記をつけ始めて早三年になりますが、一向に見られる気配がありません(笑)ただ、夢の中で誰かが感じていた感情をより鮮明に思い出せるようにはなってきたなと思います。これは嬉しい誤算でした。トロイメライシリーズは物語を創造するというよりも、エッセイとして別人格の体験談を書いているような感覚に近いので、エピソードだけを頼りに心情を想像して書くよりリアルに心理描写が書ける気がします。
 逆に困ってしまうのは、どんな体験をしたかとか何を言われたかはぼんやりとしか思い出せないけど、こういう感情になっていたなという部分だけはっきりと覚えている時です。物語を起こそうにもエピソードがないと難しいし、その感情が悲しみや怒りだったなら不快感だけが残りますから(苦笑)
 でもこれは少しずつ一人称視点に近付いているのかな~とワクワクもしています。
いつか本当に明晰夢が見られるようになったらこのシリーズは終りを迎えるかもしれませんが、それはそれで新しいお話が書けそうな気もするので楽しみに続けてみたいなと思います。

 近々同シリーズの【第四夜】【第五夜】を投稿予定ですが、こちらの夢はかなり現実味が強くゾクゾクする体験でしたので早々におすすめしておきます。ミステリーホラーなど好きな人はぜひご賞味下さい。

では今日はこの辺で。
おやすみなさい、良い夢を。

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