出陣の朝。
「全員、整列!」
号令が響く。
スパルタ兵たちは、鍛え上げられた肉体を並べ、盾を構えた。
……が。
「待て」
隊長が眉をひそめた。
「何かおかしくないか?」
「何がです?」
「人数だ」
兵士たちが互いの顔を見る。
「数えろ」
「はい!」
一人。
二人。
三人。
しばらくして――。
「二百十五人です!」
「…………」
隊長が固まった。
「もう一回」
「二百十五人です!」
「ちゃんと数えろ!」
「ちゃんと数えました!」
「三百人じゃないのか!」
「三百人の予定でした!」
「予定!?」
隊長が頭を抱える。
「八十五人はどこへ行った!」
「知りません!」
「探せ!」
「はっ!」
◇
「宿舎にはいません!」
「武器庫にもいません!」
「馬小屋にもいません!」
「そもそもスパルタ兵に馬は必要ですか?」
「今はどうでもいい!」
◇
「隊長!」
「見つかったか!」
「一人いました!」
「よし!」
「ただ、昨日飲みすぎて動けません!」
「戦場に連れていけ!」
「無理です!」
「スパルタ兵だろ!」
「二日酔いです!」
「知らん!」
◇
「隊長!」
「今度は何だ!」
「二人見つかりました!」
「どこにいた!」
「食堂です!」
「何をしていた!」
「朝飯を食べてました!」
「飯を食ってる場合か!」
「朝飯抜きで戦えと!?」
「……」
隊長は黙った。
「食べ終わるまで待て」
「隊長!?」
◇
結局。
集まったのは――二百十八人。
「……八十二人足りない」
隊長は遠くを見つめた。
「このままでは三百人にならん」
「隊長」
「なんだ」
「二百十八人でも戦えますよ」
「そういう問題じゃない」
「何が問題なんです?」
「スパルタ300人って言っちゃったんだよ!」
「誰に!?」
「歴史に!」
スパルタ兵たちは沈黙した。
そして隊長が叫ぶ。
「あと八十二人!」
「はい!」
「何としてでも探せ!」
「敵軍はどうします!?」
「後だ!」
「いや、そっちが先では!?」
こうしてスパルタ兵218人は、
敵軍そっちのけで、行方不明の82人を探し始めた。