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べびわる2見た





 角瓶がある。
 俺は基本的にコークハイで晩酌する。酒が減るのが遅いし、コーラが美味いし、のんびり飲める。
 最近、酒量が増えている。
 酒のいいところは恐怖心が吹き飛ぶところで、何も考えなくて済むようになる。
 刀工・源清磨が酒を飲み倒した気持ちがよくわかる。
 作ったものの反応とか、持ってったやつが刀折れて死んだりしないか、考えなくて済むからだ。
 酔っぱらったふりもできる。


 今日はなぜか最悪の気分で、どうにもならなかったからコークハイをぶち込みまくった。もう何杯飲んだか覚えてない。
 でも酔ってない。
 なんか覚めてる。
 指はさすがに鈍い。さっきから誤字が多いし、痺れる感覚がある。ここまで飲むと執筆には差し支えるらしい。

 なので秘蔵のべいびーわるきゅーれ2を見た。

 もともと1作目が好きだったので、2はここぞという時に見たいと思って取っといた。
 今日はつまりその秘蔵に手を出すほど最悪だった。なんでだろうね。
 別に仕事で嫌なことがあったとか、満員電車がいつもよりひどかったわけでもない。

 なんにもないいつもの一日だったのに。
 その一日すら不満らしい。

 で、映画。
 いい映画だった。98点。
 いや、本当に無駄なシーンばかりの映画。
 意味のないシーンがたくさんある。
 なんて贅沢なんだろうね。
 たった一秒にすら、ズートピアが情報を押し込んでいるのに。
 べびわるは当たり前みたいに尺と時間をゴミにする。

 そしてそのゴミみたいなシーンが一番、記憶に残る。
 俺は。

 すんごい贅沢だと思うんだよ。
 いい映画だなあ、と思う。
 まあ、最後のアクションで全部持ってく自信があるからなんだろうけどね。

 確かに良かった。
 ふつうは1から2って崩れるんだよ。俺はズートピア2も崩れたと思ってる。
 でもべびわるは2でトーンアップしてる。
 いかれてんのかな?って思う。

 水が上から下に流れるように、1で使ったアークを2では使えない、使っても同じ味しかしないんだから、2は困るのよ。

 なんでトーンアップするのよ。

 意味わかんない。

 バグなの? 飛行艇が速く進むみたいな。ファミコンの限界を超えてるみたいな。

 脚本が優しいんだよね。

 人は死ぬんだけど。

 人が死ぬことと、脚本が優しいことは、また別なんだね。

 人が一人も死ななくたって、冷徹な脚本はきっとあるし。


 べびわるは人気らしいけど、そういう優しさがイイんじゃないかなあ、と思う。

 人物がコマじゃないんだよね。コマにしてしまう脚本は本当に多い。どんなにお化粧をしたとしても。

 だから好きなんだよね。励まされる。

 だから今日みたいなきつい日に選んで見た。




 こういう映画が増えて欲しいんだけど、どうだろう。

 なんてジャンルなんだろうね。

 なんかちょっと銀魂っぽいというか、大仰な設定を日常臭さで中和しているというか。

『男子高校生の日常』とかね。あと俺の沢村とか。

 顎は本当に腕っぷしの強い女が出てりゃなんでもいいんだなと言われればもうそうだろうねとしか言えないよね。そうだからね。

 なんでだろうね。

 アクションシーンなんか見ると、これは小説で表現するのはどうすればいいんだろう、と思うよね。

 なんだっけ、誰か、誰だっけ。夢枕獏だったかな。違うかな。「肘、肘、肘」とかね。あるらしいけどね。

 トップスピードで振り回すか、それとも技術論的に時間を引き延ばして厚みを出すか。誰だっけ。司馬遼太郎はちょっと違うな。なんだっけ。

 司馬遼太郎はアクションシーンなんか誰が書いても一緒だって嫌がってた気がするけど俺にエビデンスは存在しないからね。嘘かもしんない。

 何にも覚えてやしないんだ。何にもわかりゃしないんだ。

 でも、べびわるのアクションって楽しそうだから、小説で表現してみたいな、と思うけどね。

 なんていうか、最適解の軍用格闘術とかじゃなくて、子供が妄想で考える最強のアクションシーンみたいな、素朴さがあるんだよね。たぶんこれはわざとそう作ってると思うけども。

 正しい、というのはあっという間に袋小路に突撃するからね。最後には入らなきゃいけないにしても、なるべく引き延ばしてごまかしたいというのが本音だと思うのよ。


 正しくない脚本って強いのよ。

 べびわるも狂ってるし、最近だとチェンソーマンとかもいかれてると思うんだけど。

 脚本がいかれてると受け手が次を予測できないから、常に叙述トリックを撃てるみたいなボーナスタイムに入る瞬間があるんだよね。

 あれずるいんだよね。

 一発撃つだけで破壊力抜群の叙述を秒単位で仕掛けることができるわけで。

 ずるいんだよ。

 脚本がいかれてるとそれができる。それは、『ルールを守ってないから』なんだよね。

 ルールを守ってない脚本だから、次を予測できない。もしかしたらコイツはやるんじゃないか、と圧をかけられる。

 うらやましいよね。強いよ。それは。

 べびわるとか下手したらホントにまひろあたり死ぬんじゃないかとか(冷静に考えればありえないにしても)脚本の雰囲気からしてやりかねないというね。だから緊張感がある。

 彫刻刀を振り回す可能性のあるやつの手に彫刻刀があるのと、絶対に彫刻刀を振り回さない常識のあるやつの手に彫刻刀があるんじゃ、ぜんぜん圧が違うんだよね。

 ずるいよね。

 酒が残り少なくなってきた。角瓶が無くなっちゃった。でも大丈夫。俺には買い増したトリスがある。

 俺は映画で脳みそをキャリブレーションする。映画を見ることで自分のことを忘れられる。

 でも忘れようとしてるだけなんだろうね。

 いつか本当に自分のことを全て忘れてみたいね。

 そうしたらすごくフラットに映画を楽しめる気がするんだよね。

 自分なんていらないじゃん? 本当にいい映画を前にして。

 働いて、家に帰ってきて、なーんにも不安なんかなく、酒も飲まずにさ。

 映画を見て楽しみたいな。

 そうしたらさ。一日さ。

『自分』なんてものがさ。

 一瞬も存在しないまま。

 お布団に入って眠れればさ。

 幸せじゃん?






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