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幻の記憶

 「夢来見祭り」か、ふふ、懐かしいね。


 あの時の装いを、まさかあんなふうに言われるとは思っていなくてな。
 彼は私を「神」としてではなく、「一人の女性」として見てくれた。
 彼にとってはただの社交辞令にすぎなかったのだろうが……急に顔が熱くなって、胸の奥で何かが疼くようで……どう答えていいか、よくわからなくなった。
 あまり思い出させないでくれたまえ……ふん……。
 

 ……射的屋の話か?

 彼は最初から、あの出店がいかがわしい店だと気づいていたのだろうな。
 だが、私が楽しんでいるのを邪魔しようとはしなかった。
 いつものように、冷淡な皮肉を投げかけながらも……どこか観察するような態度だったね。

 景品を次々と撃ち倒す感覚……それはもう、爽快だったさ。
 本当に、楽しかった。
 私は、ラナスで彼と互いに滅ぼし合う戦いをした記憶しかなかった。
 こんな日常がずっと続けば……。

 おっと、すまない。また感傷的になるところだったよ。


 ……店員が私に殴りかかろうとした瞬間、彼は迷いなく動いた。
 まるで「手を出すな」とでも言うかのように。

 あの時の彼の目は、確かに鋭かったね。敵を射抜くような冷酷な視線……。
 これ以上私に何かすれば、命を奪うことも辞さない、そんな目だった。
 あの店員が怯えたのも無理はない。

 でも、私にはわかっていた。
 彼はただ、私が不愉快な目に遭うのを避けたかっただけなのだろう、と。

 彼は私を「守る」とは言わない。けれど、私が楽しんでいる時に邪魔が入るのを許さなかった。
 彼自身は気づいていなかったのだろうが、あれが彼なりの優しさだった。私はそう思うよ。

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