https://kakuyomu.jp/works/16818792438048725794/episodes/8221398372754773571189年(文治五年)――冬の青景に、三つの影が現れた。
古びた刀を隠し、稚児を連れたその旅人は、関守たちにこう告げた。
「地頭殿に、お目通り願いたい」
安介は父に代わり、二十の武者を率いて関へ向かう。
だが、剣を交えた瞬間に思い出す。
――この男、壇ノ浦で祖母を抱いて海へ沈んだ、あの時の――。
「あなたは義経だ」
「あなたは……安徳天皇だ」
敵として別れた二人が、冬の青景で奇跡の再会を果たす。
義経は「兵十」と名を変え、妻ゴン、娘カメとともに静かに暮らし始めた。
青景の稽古場には流鏑馬の声が響き、醍醐の香りが立ちのぼる。
戦に明け暮れた英雄は、いま、里の師として笑っている。
そして――
安介と義経、二人の魂は、ようやく争わぬ未来へたどり着いた。
長き旅路の果てに辿り着いたこの安徳天皇の物語。
ここに完結。