https://kakuyomu.jp/works/16818792438048725794/episodes/16818792440623488205雪解けの北上川がきらめき、春の風が山を包む。
源義経――追われる身となりながら、再び奥州・平泉の地へと帰ってきた。
かつて学び、笑い、剣を交わした日々。
仏法と金の力で国を築いた藤原秀衡。
その子・泰衡、国衡――兄弟のように過ごした仲間たち。
彼らの待つ都は、今も黄金に光っていた。
「……花か。もう二度と見ることはないと思っていた」
雪の残る山道に咲く薄紅の桜。
義経は、京を離れて以来はじめて春の色を見る。
だがその瞳には、過去の影と、まだ消えぬ決意が宿っていた。
弁慶、郷御前、そして幼い娘・桜子。
生きるために、戦うために、北へ――。
「――行こう。頼朝の影も、追手の刃も、届かぬ場所へ」
雪解けとともに訪れた、義経にとっての“最後の春”。
そこに芽吹くのは、再生か、それとも運命の予兆か――。