没文を入れた形。最後は没ネタで締めてます。
クロウはあっという間に広がった大喧嘩を前に力なくうな垂れる。
「……どうしてこうなった。ああ、また糞婆に怒られるぅ……」
「キャー、先生可哀そー。ねぇ先生。可哀そうだね」
「ああ、俺は可哀そうなんだよ。糞婆に人生最大の大勝ち中にカードの回収もしないまま誘拐され、気付いたらこのクラスの教師に。そして毎年トラブルに巻き込まれている。ああ、パチンコ&スロット漬けの死体のような日々に戻りた――いや、死水綺羅々。お前は何でおれの後ろに隠れているんだ」
「安全地帯だから。だってぇ、怖いんだもんっ! さっきのいかつい大男も、血肉だけ食って育った狂犬みたいなあの歯の鋭い男の人も、怖いっ! このクラスで怖くない男子生徒天之くんだけだよぉ。なんで天之くん、意外とチョロ――温厚で優しくて《《可愛い》》のにあんなに怖がられてるんだろうね?」
(……そういえばこいつ、あの日勉強に忙しかったとか言って遅刻してきたし、決闘も見に来てなかったな。そりゃ、普段のあいつだけ見てればそんな感想も抱くかな)
今まで何人もの生徒のグロテスクな死体を見てきたクロウさえ血の気の引いた、あの日の天之玄咲の地獄を引き連れた悪魔のようなオーラと、かつて担任したこともあるパチンコ好きのヤンキー岩上若芽の死体と、サンダージョーの酸鼻で凄惨な生々しく脈動する赤白黒い血肉骨を久しぶりに思い出しながら、今更ちょっと引きながら、クロウは更に思考を進める。
(まぁ、優しいのはこいつが美少女だからってのが大きいだろうな。あいつ美少女大好きだから。でも天之玄咲。お前、チョロいって思われてるぞ。それでいいのか)
「ところでさぁ。クロウせんせ」
「なんだ」
「喧嘩、止めないの?」
「――そうだな。そろそろ止めるか。毎年恒例みたいなものだが、今年はいつもより酷い。血気盛ん過ぎる……」
「キャー! せんせー格好いいー! あのさ、あのさ、もし喧嘩止めてくれたらね」
ケミカル。
「――なんだ」
クロウの脳裏に過る。
「私特性のね――」
ケミカルの味。
「ケミカルスターピンク味を売ってあげる」
ピカピカと頭が弾ける、魔法を使わない魔法の液体。
「――」
クロウの喉がゴクリとなる。
「キララ、それは」
そしてキララに手を伸ばして――。
「教師を舐め過ぎだ」
デコピン。
「あいたっ! なんで~?」
うるうると星の入った瞳をわざとらしく潤ませてクロウを見上げるキララにため息とともに、
「くだらない工作ばっか考えてないでせっかくラグナロク学園に入学したんだから真っ当に魔符士として強くなれ。お前には才能があるんだから」
そう告げる。
「――」
キララは眼をパチクリさせたのち、ちょっと頬を膨らませて、
「……ちぇっ、はーい」
しかし、素直に言葉を受け取る。クロウは少し笑んで頷いた。
「でも、ただならもらってやっても」
「あ、いいです」
「そうか、残念だ。さて、それじゃ止めるとするか。最悪実力行使も視野に入れて」
まずは言葉でけん制。
「お前ら、やめ――」
「オラァ! 人間サッカーだぜ! ギャハハハハハ!」
「はぁ!? ワイの殺人釘バット打法で打ち返したるわ。猛虎魂見せたるわぁあああああああああああああああ!」
「なら俺は人間ギロチンだァ! プライア印の地獄の断頭台じゃいっ!」
「おいお前らやめろ。それはマジで死ぬ奴だからやめろ」
「ならこっちは人間飛行機(漫画で描かれる乗り物)だぜ! メーデー! メーデー! キィイイイイイイイイイイン!」」
「なら俺はお前を飛ばす人間発電所だ! 見晒せやオラァ! シコッシコッシコッシコッ!」
「……おいお前ら。やめろ。という何遊んでる。みっともないからやめろ」
「このアバズレがぁ! あたいあんたのこと前から髪引きずり回して裸で校内一周させたかったんだよ!」
「上等だァ! こっちこそお前を体育倉庫にG組の男子生徒1ダースセットで閉じ込めてやらァ!」
「へっ、加勢するぜ。体育倉庫でパーリナイだッ!」
「おいお前冷静に考えろ。満子とのパーリナイとジュンコの裸散歩、どっちが価値あると思う?」
「……」
「な、なによその眼は。3人は卑怯よ。やめて、やめてー!」
「やめろ、やめろって――」
「さとしィ! もうやめてくれェ!」
「はぁ、はぁ、熱いからズボン脱いだだけで騒ぐなよ……」
「お、おぉオエエエエエエエエぇエエエエエエエエええええええええ!」
「デカ過ぎんだろ……」
「……ポロリ、ポッ」
「おい、お前ら、本気で洒落にならなくなってきたからもうやめ――」
「ギャーッハッハッハァ! 俺はMCムーンライト・セレナーデ! 月光蝶伝説の体現者だァ! 月を見たら俺を思い出せェ! フフフ、フハハ、ハーッハッハッハァ! そのまま死ねェ!」
「な、なんだァあいつ!? クール系かと思いきや楽器ケースからギター取り出した途端テンションモンスターになったぞ!?」
「やめ、殴るなって、お前、それ楽器の使い方間違ってるって。ぶべっ!」
「キャー! MCムーンライト・セレナーデー! またライブ行くからねー! また絶対ライブ行くからねー! キャー!」
「センキュゥ!」
「――駄目だこりゃ。いつもの奴で手早く終わらせるか」
クロウは色々と諦めてポケットに手を突っ込み、クロウだけに扱える専用カードを取り出した。
パチンコ&スロット専門店 玉王
会員No000096
会員名 クロウ・ニート
ゴールド・カード。
「おっと間違えた」