37話を削った分を36話に足しました。
https://kakuyomu.jp/works/16816927861320346372/episodes/16817139557147117436
以下加筆分です。
「え? ビエラが姉さまの専属教師に?」
夕食|間際《まぎわ》に戻ってきたユーリは、私の言葉に思いっきり眉を顰《しか》める。
「もう少しここでサスキ様に教えを請いたいけど、いつまでも公爵家の令嬢と令息が領地にいるとうそをつくのは限界があるでしょ」
まあ、王子の従者候補としてはもうそろそろ顔を出さないわけにはいかないだろう。
この7か月、私はサスキ様に基本的な魔法制御と自分自身で魔法陣を身代わりの人形に移す練習をしてきて、やっと今日屋敷に帰っても大丈夫、とお墨付きをもらったのだ。
「魔力制御は……」
「完璧よ」
「でも、魔法陣を……」
「身代わりに移すのも、マギのものに戻すのも自分でできるわ」
「万が一それがマギにばれたら……」
「その時は、師匠の所に転移できるの」
「は?」
「まだ、自分だけじゃ無理だけど、あらかじめ転移の魔法陣を施した場所なら転移できるようになったの」
「うそでしょ!」
ユーリは目を見開いて驚いている。
「屋敷の私の部屋に、ビエラが魔法陣を描いてくれる約束なの」
「個人所有の転移魔法陣なんて聞いたことありません」
まあ、転移魔法自体王族の脱出用に王宮に数か所あるだけだといううわさだ。それも、高価な魔石の力を使ってじゃないと発動しない。
高価な魔石とは信じられないくらい魔力量を保有する石のことだが、私の場合、自分の魔力が膨大なので魔石を必要としないチートぶりだし。
ふふふ、悪役令嬢のチート設定をあなどるなかれ。
「治癒魔法とか、攻撃魔法とかいろいろ教えて欲しかったけど、まずは危険な時に姿をくらますことができればあとはサスキ様が何とかしてくれるかなと思って」
「僕がいるでしょ」
何故かすねたように、頬を膨らませるユーリがおかしくてもう少し意地悪をする。
「だって、誰かさんは私の修業に付き合うより、ラキシス相手に鍛錬してる方が多いし」
私のせいで山を下りてしまった勇者の所へ、ユーリは毎日足げく通っている。
年齢が近く、魔法を思いっきり使って戦うことができるラキシスはユーリの闘志に火をつけてしまったらしい。
「そ、それは姉さまを守るために強くなりたいから」
「嬉しいけど、山を下りなくてもここにはビエラもいるじゃない」
「それは……」
「親友と稽古した方が楽しい?」
「なっ、親友とか違うから」
「あら、違うんだ。じゃあ、これからはビエラが公爵家に来てくれるから、わざわざここまでくる必要ないわね」
「そうですね」
ふてくされて返事をするユーリがあまりにも可愛くて、私は久しぶりに弟の頭をわしゃわしゃしてあげた。
全く素直じゃないところがめっちゃ可愛い。
「帰ったらまずはビエラに転移魔法を習うといいわ。そうすればいつでもお友達と鍛錬できるから」
*
そして、魔力解除と同じくらい大事な事がいよいよ迫った来ている。
絶対に、阻止しなくちゃ。