「何を願うの?」
不安の解消
「何を求めるの?」
寂しさの解消
ユイ「幸せじゃないのね」
はっと目がさめる。手は汗ばみ、外でうるさいほどに蝉が鳴いている。麦わら帽子を被り、僕の頭に手を乗せて言ったその言葉が蝉の声と共に耳に張り付いてた。体を起こす、テーブルにあった殆ど中身の無くなったペットボトルを口に向かって傾ける。少し水滴が舌先に触れた。体を起こして、台所に向かう。机の上には、先日貰った内定の書類と、辞める会社の返却物をまとめた紙。書き殴ったようにチェックがつけられ、内定の書類の封は開けられてもいない。
台所で、蛇口を捻り、殻になったペットボトルに入れる。半分ほど溜まったところで、勢いよく喉に流し込む。蝉の声は長く長く鳴り続けている。ふっと、流しにおかれた包丁をみる。すぐに飽きて、まな板を見る。ペットボトルに水を追加して、また直ぐベットに横になる。もう、何年もこうしている気がする。比喩ではない、ずっとこうしてきたのだ。安心のために努力して、逸れ者にならないように取り繕って、でもやっぱり居場所がない。昨日、女友達から送られてきたメールのせいだ。
「xxxくんは、本当に向上心が高いんだね!」
あのメールのせいで、変な夢を見たのだと思った。
何を願うの?
「安定」
何を求めるの?
「何もいらない」
ぽつりと言葉を漏らす。
「そう、幸せじゃないのね…」