• 現代ファンタジー

意味と無意味

血塗れの中、双眸は深く円を描いて瞳の奥に落ちていく。手握られた誰のかもわからない子供の掌サイズ太さの骨。いつから握っていたのか、なぜ握っているのかもわからない。それでもこのくらい空間で、これが一番大切なものだとわかる。学習机、食卓、台所、冷蔵庫、椅子、紙、本、ギター、スキー板、杖、包丁、テレビ、カメラ、アルバム、お母さん…眼が私とあう。私を見ている。私の後を見ている。

意図せず、唇が動く

「私たちは、意味もなくこの世界に投げ出された。この世界に対して、私は何もしていない。でも私は勝手に意図せず、意識なく、身勝手に此処に存在させられている。私は、あなたに問いたい。私はなぜ生まれたのかと。貴方の瞳の中には私がいる。その私を私は知っている。私ではない、私と同じ何か。だから、私はこの世界に投機する。私は私に私の全てをぶつけて、私の意図を私を含む、多くの私にぶつけるためだけに、今此処にいる。」

母の唇が動いた。

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