最後の異世界転生譚 ――Echoes Beyond the Aurora Manuscript――
https://kakuyomu.jp/works/1681862217100678216287話 兵戈として
激戦の翌日、アーミラとウツロはラーンマクの防壁をくぐり、ついに前線国家ラーンマクへ入る。
だがそこに広がっていたのは、国と呼ぶには余りにも荒廃した赤い干潟。生活の匂いはなく、血と戦の匂いが支配する死地だった。アーミラは生き残った者としての苦悩と、兵器としての自分の存在意義を再確認し、変化した自身の精神性と向き合い始める。
アーミラの変化を示す回。『兵戈《へいか》』という語彙を用いて彼女の自己認識の移り変わりを端的に表現しています。プロット的には「主人公の進む道がややズレ始める」パターンですね。
大切なものを守れる強さを求めていたはずなのに、復習に囚われ、視野が狭くなっているアーミラ。いったいどこへ向かうのか。
88話 お前はここの生まれか?
オロルと再会を果たし、互いに情報交換を行う。スペルアベルの戦闘は勝ちで終わったものの、魔鉱石や兵糧は逼迫し、継戦能力は限界に近い。そんな中、アーミラが突如「ここに来たことがある」と口にする。
それは彼女自身の記憶が失われている中で明確な違和感をもたらす発言だった。特に「スペルアベルの涸れ井戸」を知っているという点は決定的で、それは敵の侵入経路となる秘密の地下通路だった。
オロルはアーミラの過去に潜む異常性に初めてはっきりと気づき始め、彼女の出生、育ち、存在そのものに何か大きな齟齬があることを予感する――。
アーミラの記憶喪失が物語の核に関わっていることを匂わせる回。
散りばめている伏線がこのあたりで回収され始めて、大きな流れ(本作の全体像)が見え始めます。
89話 綺麗だったのに
オロルの問いかけにより、アーミラの中で封印されていた記憶の匣が開き始める。彼女は確かに「ここで死んだ」と感じており、その記憶は流浪の民として歩んでいたマナと少女アルミリア(=アーミラ)の過去へ……。
戦場の流れ弾で命を落としかけた少女は、マナによって助けられる。しかしその代償としてマナは自身の角を削ぎ、魔鉱石代わりとして少女を救った。
だが、目覚めた少女の肉体は以前のものとは違っており、他人の体に自分の意識が宿っていることを自覚する。
本作をここまで読んでくれた読者に、報酬が与えられる回です。
伏線や匂わせで引っ張り続けてきましたが、今回はアーミラとマナの過去について新情報が明かされます。次回も回想が続きます。
90話 お願いだからこの子はやめて
幼き日のアルミリアは戦火で命を落としかけたが、マナの手により魔人種の遺体に首を移植され生き延びた。その事実を知って怯えるアルミリアにさらなる異変が起きる。
胸から溢れ出すまばゆい光、それは刻印――次女継承者の証だった。
その力はマナが何より恐れていたものであり、少女を運命の呪いへと導く印でもあった。
記憶を取り戻した現在のアーミラは、静かにその事実を受け止める。
継ぎ接ぎの命。
才覚を秘めるアルミリアの頭部と次女継承権を持つ魔人種の体が繋がることで、運命(神)に目をつけられてしまう。そんなアーミラを、マナは身を削って隠した。
『お願いだからこの子はやめて』
代償として、マナは醜く老いてしまうのだった。
91話 詮無きこと
アーミラは記憶の回復を経て、マナが命を懸けて自分の刻印を隠し、そしてその結果命をすり減らしていったことを語る。
それに対してオロルは、彼女の過去と現在を受け止め、詮無き(どうしようもない)こととして理解する。
感情の整理を終えたアーミラの前に、ついに『災禍の龍』が姿を現し、物語は最終決戦の幕開けへと進む。
ひとまずアーミラの目的である「無くした記憶を取り戻す」ことは成功しました。
ボスの登場です。