拙作『深緋の恵投』に続きまして、『慧眼の少女』のあとがき的、製作秘話的、解説的なものを、書いてみようと思います。
※以下ネタバレ注意(『深緋の恵投』はあまりネタバレしない方向で書いているつもりです)
☆『慧眼の少女』の製作過程について。
本作は、『深緋の恵投』の続編ではなく前日譚です。
これは東野圭吾さんの『マスカレード・ホテル』の同シリーズの別作『マスカレード・イブ』からヒントを得たものです(というか真似しています)。
『マスカレード・ホテル』が、山岸尚美と新田刑事が出会って、ぎくしゃくしながらも事件を解決する話であるのに対し、『マスカレード・イブ』は二人が出会う前の話、つまり前日譚であります。しかしながら、実は出会う前に奇妙な因縁があるというところに魅力を感じ、畏れ多くも私もそれを真似たいと思いました。
よって『慧眼の少女』は、優梨と影浦がいかに直接的に出会わないようにして、物語を進めつつも、優梨サイドと影浦サイド双方の人物をリンクさせるか、というコンセプトをもとに書き始めたのが最初です。
ゆえに、おのずと、影浦サイドのストーリーと優梨サイドのストーリーが並行して展開するという、構図となりました。
そこで架け橋となるキーパーソンとして作られた登場人物が、千里です。
千里をどのように作品に絡めるかについては、本当に悩みました。
『深緋の恵投』を見直した結果、その作中では明かされていない、風岡がラグビー部を辞めた理由、優梨が医学部を目指すようになった理由について、『慧眼の少女』で明らかにしていこうと考えました。
また、『深緋の恵投』で途中から影を潜めてしまった解離性同一性障害についても、なるべく作中に取り入れていこうと思いました。(充分に取り入れられているか分かりませんが。)
『深緋の恵投』で九州が登場したのに対し、『慧眼の少女』では沖縄県……
南国好きなのがバレてしまってますね(笑)。
しかし、沖縄のアイディアはまったくの偶然の産物です。
何も知らず優梨に『大城』という苗字をあてがったところ、沖縄に多い苗字であることが後で判明しました。
また登場人物は色に関係する名前が多いのですが、使われていないカラー『桃』色を使おうとして、『桃原』が沖縄のご当地苗字だが、読み方が特殊であることなどを、何とかうまく作中に取り入れられないかと思いました。
また千里は、タイトルどおり慧眼の少女であり、換言すれば千里眼を持つくらいの少女にしたく、彼女の名前はすんなりと決まりました。
あとは、千里を影浦サイド、優梨サイドの舞台の登場人物をかき乱しながら、その背景には彼女なりのやむを得ない理由を付けて、まったくの悪者にはしないように心がけました。
また作中で、影浦サイドの人間と優梨サイドの人間が近くに居るのに絡まない。正確には絡んではいるけど、赤の他人として接しているところで、『深緋の恵投』での運命の出逢いには、実は因縁があったというところを、伏線として入れてみようとしました。
両方を読まれた方は気付かれたのかな、と思いますが。
この作品でもっとも苦労したのは、論理パズルです。
私自身は、優梨にも影浦にも千里にも程遠く及ばない頭脳ですので、彼らが勝負できるようなハイレベルな問題を、作ることはおろか解くこともできません。
しかも数学の専門的な問題は、難解なだけで面白みに欠けるでしょうし、数式も何もいらないクイズなのに、解くのが著しく難しい問題は、なかなか見つからないものです。そして私が解答を理解できない(苦笑)。
作中に出てきた論理パズルは、実際にインターネット上に存在します。
自分のオリジナルの問題で戦わせたかったのですが、無理でした……
この作品は、これといった天啓が舞い降りることなく、アイディアを苦労の末絞り出したので、『深緋の恵投』よりも字数が少ないにも関わらず、執筆期間は3か月半とかなりかかってしまっています。
正直本当に苦労しました。プロットもまともに書いていなかったので、行き当たりばったりでした。
クオリティーは下がってしまった感は否めず、あくまでスピンオフという立ち位置でのぞみましたが、多くの方からご好評を頂き、本当に嬉しく思います。
実は、大城優梨シリーズの第三弾の構想だけは存在しますが、執筆しておらず、現在執筆しているのは、まったく違う登場人物のお話です。
でも、またいずれ、第三弾も書けたら、と思っています。