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ノンフィクションノベルのお話

 ノンフィクションノベルというジャンルをつい先日知った。市民権を得た名称かはわからないが、私の書くものを表現する上でこれ以上ない名称だと思う。
 現実と虚構の境界線上のお話。大変ロマンチックだが、残念なことにそれは小説の特権ではない。
この世にはいまだ、御伽話のような理不尽が蔓延っている。
 どれだけ法が整備されようと、いじめも差別も消えてはいない。
 どれだけ社会が変わろうと、後継だの家督だのを気にする老人がいる。
 それらに飲み込まれ動けなくなった子どもたちがいる。
 そんなトラウマに足を引かれ、いまだ歩けない若者がいる。
 幸いにも、私に救えた人間もいる。
 当然ながら、救えなかった人間も多くいる。
 だから私は小説を書くしかない。
 お話の中だけでも、彼ら彼女らが幸せであってほしいから。そんなお話に託すしかない。
 私に救えたみんながずっと幸せでありますようにと。
 私には救えなかったみんなが、どうか幸せになっていますようにと。
 私の過去の過ちが、どうか帳消しになりますようにと。

 ちょうど御百度参りと同じだ。
 下手でも遅くても、繰り返し続けることでいつか届く──
 そんなロマンを信じたい夜だった。

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