Q.「インカのめざめ賞」って何?
A.偽物川には評議員さんが自分の個人賞に名前をつけれるシステムがあってですね……
どうも、藤田桜です。
この近況ノートは拙作『ある幸せなポテトの晩餐』
https://kakuyomu.jp/works/16818093093650294754が偽教授さん主催の第七回偽物川小説大賞
https://note.com/tantankyukyu/n/nfdd04d582fa0?sub_rt=share_pbで偽の教授さんに個人賞をいただいたよー!って報告になります。
やーっ、嬉しいですね! 評議員の方々にいっぱいほめてもらっちゃった。
腕を上げたとか、冒頭一文のインパクトならいちばんオモロいとか、無駄がなくて美しいとか! てれてれ。
なんか自分の成長を感じさせてもらえました。
講評でも座談会でも出てた話題なんですが「なぜジャガイモなのか」について軽く解説させていただこうと思います。
まず前提として、イモである理由は二つあります。
一つ目は、この短編がハイヌウェレ型神話をモチーフとしていること。死んだらイモがでてくるっていう部分的なものではありますが。食糧起源とか異端者とかそういう要素はあまり入れてません。
二つ目は、この短編が異類婚姻譚的なサムシングとして書かれていること。人間が人外にむりやり娶られるタイプではなく、人外が押し掛けてきて繁栄をもたらしてくれるタイプの方です。鶴の恩返しとか、蛤女房とか。
本作の舞台はナイジェリアのつもりで書いているんですが(ポートハーコートとかベニン王国とかのワードが出てきて仄めかすていど)、この地域の食べ物における富の象徴といえばヤムイモでしょう。イモです。
じゃあヤムイモでいいじゃんって話になるんですが、わざわざジャガイモにした理由もいくつかあってぇ……
一つ目が、ヤムイモだとビジュアルが分かりにくくない? ということ。偽の籠原さんが仰った通り、ジャガイモだからこそ絵面が面白くなると思うのですよ。
二つ目は、話の舞台がナイジェリアのなかでも、都市部を想定していること。ヤムイモってあくまでイボ圏とかの農村での富の象徴なんですよ。それに、アガラは田舎の価値観が合わなくて上京してきたっていう初期設定があって。だからもうちょっとシティな感じのイモを持ってきたかった。なのでポテトです。ポテトはアンデス原産のくせに欧米のイモ代表みたいなツラしてますから。
三つ目は、ヤムイモというナイジェリアにおける第一のイモが使えなかったからです。ときどきアガラが普通の食事を吐いちゃうっていう言及があると思うんですが、これはオビメフナが死んだせいで、世界を受け入れられなくなっているからです。となると彼女にとって彼氏をうしなう原因となった「国」や「外界の秩序」の側に属するヤムイモは食べがたくなるわけです。なので違うイモを持ってくる必要があった。非日常に属するジャガイモだからこそ食べて体内に受け入れることができた。
四つ目は、この話を思いついたときに聞いていた曲がNeruさんの『potatoになっていく』だったこと。「はじめにジャガイモありき」だったわけです。
複合的な原因が密かに絡まり合って、ジャガイモになったわけですね。
あとナイジェリア関係の本を何冊か読んでいたことで「やっぱ当然男はイモある方がかっこいいよねー!」という思考に侵食されて、あんまりちゃんと説明しようって気にならなかったミス。
『山月記』の虎みたいに、変身したくはないけど魅力的だよねーっ、なラインナップに含まれていたんですよ。今回私のなかでジャガイモは。
あとちょっと小ネタを紹介しましょうか。
オビメフナ(obi m efuna)は「私の心臓はなくならない」言い換えると「愛しいひとは消えやしない」という意味です。
アガラ(Agala)は「行かないで」っていう意味。
そのまんまですね。
では最後に、
素敵な企画を開催してくださった偽教授さん、
評議員の偽の教授さん、偽の籠原さん、偽の海老さん、
本作を読んでくださった方々、
普段から応援してくださっているかもしれないみなさまにお礼申し上げます。
ありがとうございましたー!!!