クソプライベート

​五行山の下で500年、暇つぶしに宇宙の真理を解き明かしてしまった猿がいた。彼の名は孫悟空。人智を超えた頭脳を持つ彼にとって、天竺への旅は単なる最適化問題のはずだった。だが、師と…

2025年、世界が熱狂する大阪万博のシンボル、巨大な木のリング。その一部に鉋を当て、来る日も来る日も削り続ける男、権田が現れた。彼の目的は、この巨大建造物をたった一本の「割り箸」…

ありえないほど筋肉質な中年男は、夜な夜な海に潜り、巨大なロープでハワイを日本へと引っ張り続けている。誰も気づかない地殻変動の裏側には、汗と涙と筋肉の物語があった。孤独で壮大で、そ…

物語の境界は、ベンチプレス一発で吹き飛んだ。 桃から生まれた脳筋の化身・桃太郎。 鬼ヶ島を持ち上げ、浦島をベンチで救い、竹取をスクワットで翻弄し、童話の枠そのものをデッドリフトで…

食い逃げ常習の中年グループ〈昼延会〉が、宇宙に巨大な鏡を打ち上げて“夜という概念”を世界から消した。レジ締めは永遠に来ない――はずだったが、常昼の監視と経済は彼らの思惑を裏返す。…

ある日から日本では、人がときどき百キロほどランダムに吹っ飛ぶ。だが人間は驚くほど頑丈で、転がって、笑って、また歩く。市役所「広域帰還支援課」の俺は、黄色い目盛り付きの傘と微糖コー…

産声の瞬間からメトロノームに合わせて鍛えられた僕は、オリンピックと世界大会のあらゆる種目で一位を取り続ける。紙コップの水、白いタオル、120bpmの秒針——三つの小物を合図に、物…

巨大和紙を折り続けたら、会議室が重力に負けた。青い輪ゴム、三分砂時計、そして局所的ブラックホール。物理は泣き、受付は伸び、コーヒーは恒星に。最後に残るのは、ちょっとだけ賢くなった…

息子の治療費と手術枠を得るため、そろばん四級の父は「全財産を賭ける」計算大会に挑む。相手は超伝導の量子コンピュータ。奇想天外な切り抜け方で食らいつくうち、父は“偏り”の正体に気づ…

舞浜の“あの場所”が閉園になって十八年。40歳になった主人公は、警備や点検の目をくぐり抜け、園内でひっそり暮らしている。白い手袋、古い地図、夜中のBGMタイマー。小さな工夫の積み…

中古のEVキャパシタ、百匹のデンキウナギ、そして「計算上は合ってる」という口癖。中年の彼は、制度の盲点と小技のテクノロジーを縫い合わせ、アメリカ全土の電力を“賄おうとした”。笑い…

脚を鍛えすぎた中年配達員が、富士山を一跳で攻略。五年後、今度はISSへ「お届けに上がります」。膝ラップ、配達バッグ、母の口癖――軽い小物が重い動機につながる、等身大コメディ。

電気代の貼り紙と、圧力鍋のホイッスル、青い洗濯バサミ。中年の修理好きが洗濯機の脱水装置を“もう一歩だけ”改造した結果、家庭用中性子加速装置が生まれる。停電速報が鳴る夜、彼は世界と…

新人バイトの僕が見たのは、まさかりを脇に置く先輩、金太郎さん。彼のレジでは、最新のキャッシュレス決済も、常識も一切通用しない。なぜなら、彼が信じる唯一の通貨は、丸くて茶色い、あの…

ゴリラの異常な筋肉が、ある日ついに臨界点を超えた。握力とスクワットだけで地球の地殻をねじり、惑星をドーナッツ型に変えてしまう。人類は総力を挙げて反撃に出るが、兵器も戦術も滑稽に裏…

全国の五つ星ホテルのシェフだけを対象にした「匿名官能評価パネル」という名目で、奇人が都内のせまい自室に彼らを招集する。出されたのはインスタントラーメン一種のみ。NDA、謝礼封筒、…

卓球台を求めて出かけた“だけ”の彼女は、抽選繰り上がりで砕氷実験のボタンを押し、空港の足止めから島でマングースに追われ、欠員補充のドタバタで月面へ。全ては偶然。最後に明かされる“…

地方マラソン当日。普通の蕎麦屋の店主・須田は、レース中に参加者全員へそばを振る舞うという前代未聞の挑戦に出る。紙コップ一口「そばショット」、塩分濃いめの温つゆ、輪っか状のひと口麺…

チャラ男でナンパな風来坊、巡航ミサイルの「トマホーク」が、違法改造した通信機でこっそり使っているマッチングアプリ、その名も『ミサ友』。そこで奇跡的にマッチングしたのは、箱入り（物…

もし、人生から「チクッ」「アツッ」という小さな痛みを、すべて消せるとしたら？ 未来の痛みを予知するアプリを手に入れた男は、完璧で快適な生活を送っていた。