• 異世界ファンタジー

感謝SS『カルさんと一緒』&ランキングインのお礼✨

カルさんと一緒


あれ以来、カルさんが僕の部屋を突然訪ねてくる機会が増えた。

「これはこれはヴェイグ様、本日もご機嫌麗しゅう。さて、私もその午後のティータイムにご一緒しても良いだろうか? いや、ありがとう、ありがとう」

従者たちも慣れたもので、手早くカルさん用の席をセッティングし、紅茶を淹れ直す。

「本日はセドューレ様お気に入りの、猫の肉球型マカロンです。この頃ジメジメとした日が続いておりますので、我が主ヴェイグ様が気遣ってくださり『爽やかな柑橘のジャムとバタークリームを挟んではどうか』という素晴らしい発想でして……!」
「アラン、そんなに話し続けたらカルセドニー殿が食べられないだろう。すまない、カルセドニー殿。どうぞ」

何故かアランは僕を高く買ってくれているのか、「主人のアピール」の機会があると雄弁になりがちだ……恥ずかしいから本当にやめて欲しい。

「ふむ、随分可愛らしい形ですが……ふむふむ、この様なものをセドューレ様が愛でているとは意外ですね」

『あっ、やばい!! 確かそれ、秘密にしろってセドューレさんに言われてたんだった……!』

僕は内心サーッと血の気が引いていったが、そんな感情が外に出ることは一切ない。
周囲から見れば、威厳あふれる美貌の闇騎士ヴェイグは、顔色一つ変えずに粛々と告げる。

「……恐らく、形が珍しいのと食感が特殊なところが好ましいのではないか。あの御仁はいつも訓練で忙しそうにしているし、手軽に糖分を補給するのにちょうど良いという意味だろう」

『よしよしよし! ナイスだ僕のヴェイグ口調! これならセドューレさんの「可愛いもの好き」がバレたことにはならないはず……たぶん!』

「なるほど、作業中にすぐ食べられるものは効率的でありがたいですな……私も経理部で計算ばかりしていると、無性に甘いものが欲しくなる時がありますし……」

──ん? なんかカルさん、マカロンと僕の顔を交互にチラチラ見てない……?

『もしかして……「私の分の持ち帰り用はないの?」って顔なのかなこれ……!? えー露骨すぎない?』

「アラン、例のものを」
「はい、ヴェイグ様。こちらをどうぞ、カルセドニー様」

スッと背後からアランが優雅に、カルさんの前へマカロンの形が壊れないようラッピングされた箱を置く。

「ヴェイグ様……もっとありますよね?」

『いや、がめついがめついぞカルさん! 贈呈用のやつなのに質より量を求めるのか!?』

「アラン。大瓶の方を」
「カルセドニー様、まさかタダでとは言いませんよね?」

おっと、アランが幹部に対して強気だ!
まぁ、流石に連日おやつ時に連絡もなく凸られれば、従者的には嫌だよな。

「……ほう? 従者の分際で私に交渉を挑むとな。良いでしょう、ヴェイグ様のおやつ大瓶のためなら。して、何を望む?」

カルさんは目をキラーンと光らせ、腕を組んだ。
アランは一切怯むことなく、懐から一枚の書類を取り出し、カルさんの目の前へスッと突きつける。

「我が主の【王都潜入に関する経費申請書】および【特別通行許可証】です。こちらに経理部長の承認印を、即座にいただきましょう」

『アラン!? それ、承認まで3日はかかるって言われてた書類じゃん!!』

「……くっ、それを今ここで職権乱用して押せと!? 経理の厳格さをなめるなよ!」
「では、この特製マカロン大瓶は私が美味しくいただくことにいたします。ヴェイグ様、お茶を淹れ直しますね」
「待て!!! 待つんだアラン殿!!……分かった、押す! 押せば良いのだろう!!」


パァン!!と部屋に虚しく響く承認印の音。


『……あ、あっさり押した。経理の厳格さとは……?』

こうして、僕は面倒な手続きを一つ飛ばし、カルさんは大量のマカロンを手に入れて満足そうに去っていったのだった。

(アラン、交渉上手すぎない……? 頼もしいけど、ちょっと怖いよ……)


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【作者より読者の皆様へ】
皆様の★評価や応援コメントのおかげで、現在カクヨムランキングに掲載されております!
お菓子で動く幹部たちと、苦労人ヴェイグの王都潜入がいよいよ始まる第39話は【9/8(火) 18:00】更新予定です。お楽しみに!

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