• 異世界ファンタジー

【書き下ろしSS:セドューレ&カルセドニーによる闇騎士談】


「ヴェイグよ。私と手合わせを願おうか」

中庭に響き渡る声に、周囲の魔王軍の兵士たちから「オーッ!」「総隊長殿と闇騎士殿の手合わせだ!」と野太い歓声が沸き起こる。

「良いだろう。周りが我々の手合わせの被害に遭わぬよう……イシュー、頼んで良いだろうか?」

久々に身体を動かそうと、セドューレ(セディ)さんに事前に許可を取って参加した訓練。
(※初見で飛び入りしてめちゃくちゃ睨まれた第24話の苦い記憶を払拭するためである)

その随伴として連れてきたヒーラーのイシューが、手際よく周囲に強力な防御結界を展開する。

その結界内へと、セディさんの側近である従者がスッと入ってきた。彼女が止める様子もないところを見ると、並の者ではない実力者なのだろう。
従者が二人の間に立ち、ゆっくりと手を下ろしながら宣言する。

「では、御二方よろしいでしょうか?……はじめ!」

その瞬間、――視界が冷徹な赤に染まり、身体が勝手に動く。

『くっ、また勝手に……!』

脳内の思考回路がカチリと切り替わり、ヘタレなゲーマー思考が奥底へ沈む。代わりに全身を支配したのは、魔王軍最高幹部『闇騎士ヴェイグ』の完璧で容赦のない闘争心だった。

「……甘い」

呟いた瞬間、纏う気配が変わったエルニア(ヴェイグモード)の剣閃が、一歩も引かないセドューレの構えを容赦なく撃ち抜く。

凄まじい衝撃波が結界を揺らし、外で見守っていた兵士たちが「すげぇ……総隊長殿の猛攻をノータイムでいなしたぞ……!」と息を呑む。


「ははっ、やはり、お前はこうでないとな! いつも厨房に入り浸り、料理人共と同じような事をしていると聞いていたが、腕は鈍ってないようだな!」

槍で雨のように刺突を繰り出しながら、楽しそうにその美しい顔を戦闘時特有の興奮に染めて笑うセドューレ。

僕はその勇姿を間近で見ながら、愛剣【ダークエスパーダ】でその槍を思いっきり弾き、わざと距離を取る。


「風よ、我が目の前にある障害を粉塵とかせ──|フラゴール・ヴァン!」

「甘いな、ヴェイグ! 私に魔法対決を挑むなど……貫け──!」

「おい、そこまでだッ!! 戦闘狂ども!!! 城の予算と修繕費をこれ以上跳ね上がらせるなァ!!」


その時、凄まじい戦闘音を聞きつけて、経理部門の書類を小脇に抱えたカルセドニーが血相を変えて中庭に駆けつけてきた。

結界の外から冷や汗を拭いながら、カルセドニーは内心で盛大に毒づく。

(まったく、普段は無表情で冷静な御仁が、いざ戦えばあの『闇騎士ヴェイグ』の殺気……そのものじゃないか……! 恐ろしくてとてもじゃないが予算の交渉なんてできやしない! まぁ、節約の為……私の研究費の為に努力するがね!)

一方、脳内の片隅で『やべえよセディさん死なないで! いや僕の身体が勝手に! セーブデータどこ!』と必死に絶叫している本来の僕と、冷徹に殺気を放つヴェイグの間で、今日も魔王軍の幹部たちは冷や汗の絶えない訓練に付き合わされるのだった。


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2ヶ月記念SSということで、魔王軍のちょっとした日常の番外編を書きました。いかがでしたでしょうか?

王都潜入編41話は【9/13(日) 19:00】更新予定です。お楽しみに!

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