「​円城塔賞」を含む小説

偉大な将軍が戦死した。 将軍と親しかった近衛隊長、宰相、大司教は、それぞれに将軍への思いをはせる。 不穏なうわさが流れる中、しだいに歯車が狂っていく。

私には、今でも忘れられない言葉がある。 “女は美しくなければ、生きている価値はない” 　 妖艶に微笑みながら十四歳の彼女が、周りの醜く五月蝿い害虫共に、発した言葉だ。 彼女は…

　部分的記憶除去。対象の持つ記憶の一部を除去する治療で、心療内科で試験的に扱われている。精神科医である若月　渚（わかつき　なぎさ）は虐待を受けていた少年に対し、この治療を行なって…

　あたしねえ、実は女の子が好きなんよ、とポリ袋に入れたトルエンを吸いながら道子は言った。私もトルエンを吸いながらだったので頭がそんなに回らず、へぇ、そうなんだ、としか言えなかった…

　私は多くを望まなかった。ただ、私が好きになったあの子と、私たちが出会うきっかけとなったアコースティックギターを互いに弾いて、それでいつまでも二人で笑い合いたかった。それだけだっ…

人類が生存可能な惑星を探して移民する目的で、数世紀前に地球を出発した移民宇宙船『アフロディーテ号』 ──すでに世代交代は三世代まで進み、地球の存在がライブラリー・メモリーと化した…

内気ちゃん。それが彼女・小内希心の教室でのあだ名。 アイドルに憧れを抱く彼女と、現役アイドルで同じ学校の先輩・神崎翌檜は、文化祭のステージ係で出会う。

海からはじまったいのち。 進化をむかえ、知能を得て、あらそいを知り。 醜い陰惨な、ながい時間を、やがて超える。 その先にあったものは……。

上司のパワハラ。溜まりに溜まった怒りをぶつけて、上司を殴打してしまうヤスシ。 逃げる選択をしてしまい、どこにいこうか悩んだときに思い出したのは、学生時代に住んでいた街の警察官だっ…

結婚願望を捨てて15年。 もうきっとこのまま年を重ねていくのだろうと思っていた。 しかし、人生は何が起きるか分からない。 いつの間にか申し込まれていた婚活パーティーに俺は渋々出…

4年生の時に両想いになった女の子、小川さん。 あの事件のことを忘れたことはない。 5年後、彼女とのささやかな秘密を思い出した少年は、深夜の小学校への侵入を試みる。

博打で金を擦った男が迷い込んだ小道で見たのは顔のない奇妙な布袋の像だった。

今より少しだけ未来の話。 プロの総合格闘家を目指している男がいた。頑強な肉体づくりのためには十分な栄養補給が不可欠となる。 新鮮な肉、魚、野菜を摂取すること。そのために男は奮発し…

集中豪雨に見舞われた村。 避難所生活のさなか、ボートで見回りに出た主人公たちを襲う恐怖の体験。

結は友達の薫と一緒に、カフェで思い出話をしていた。スマホ片手に、写真を見せながら語る結と、聞く薫。しかし、随所で自分の思い出が――記憶が抜け落ちてしまっていることに結は気づく。一…

工学博士鮭延郁人が、今やまさかの流行病で死ぬ。俺澤田忍は、郁人が最後に研究していた楽器ジェネレーターを引き継ぐ事になる。その過程として、東麻布のクラブ：キャンディでＤＪ補佐をする…

『だからきりひとはよわいままでいいんだ。あたしがずっと助けてやるんだからな』 　幼稚園の時、幼馴染の霧人とした約束。 　霧人のことは、ずっとあたしが守っていくと思っていた。 　…

カクヨムコン9短編小説賞2023参加作品 SNSでの出会い。 そこにいる、私。 そこにいる、あなた。 仮想世界にいる私は、一体誰？

新人アイドルのマネージャーをしている男。 ある夜、担当アイドルを地方会場へ送り届ける運転中、彼はふと過去に担当した女性アイドルのことを思い出す。