「同じ時間」を含む小説

「行ってきます」そう言って、あたしは玄関を出る。でもマンションの階段を下りずに、手すりから四階下の地面を見下ろした。 　マンションの一階の出入り口から、紺のブレザーを着た男子学生…

名もなき森の奥深くに、ひとりの青年が暮らしている。 彼は、道に迷い疲れ果てようやく辿り着いた旅人たちをあたたかく迎え、その話にとても熱心に耳を傾ける。 旅人たちは皆、青年と…

この広い大地に人として生まれ、 同じ時間を夫婦として、家族として 過ごす縁の不思議さは勿論の事、 共に学び・遊び・働く出会いも 又不思議である。 おそらく一緒に過す時間が長い…

■僕の名前は土方明憲《ひじかたあきのり》。年齢は40歳で独身。職業は交通課の事務。 趣味は特になし。以上。 僕が語れることはこれくらい。毎日同じ時間に仕事に行き、同じ時間に仕事を…

『ヘイスちゃん、たみちゃん、こんにちは！ 　私はコンビニでバイトをしているのですが、最近ほぼ毎日、同じ時間に同じ女のひとが同じ雑誌を買っていきます。 　これって不思議じゃありませ…

　ある日目覚めるとそこは病室だった。 　桂達也（かつらたつや）にはある記憶がない。 　それはわかっているのだが、具体的にどんな記憶がなくてどんな記憶があるのか。 　自分では曖昧…

美術部員のすみれは放課後になると題材を探しに校内の温室へ向かう。 しかし題材探しは表向きの理由で本当は 憧れの先輩、立羽瑠璃子と同じ時間を共有するだめだった。

通学路でもある地下道で見かけ始めた女の子、小学生らしいがいつも同じ時間帯に同じ場所で同じ姿で壁に向かって立っている。動きもしないし、顔も見せない。一体何をしているのか、誰かを待っ…

二人は決して同じ時間を過ごしはしない。だからこそ、せめて五分だけは同じ時間を――。

　家庭事情に問題を抱える高校一年生の霧島・篤は、町はずれの廃墟で別学校の三年生である富士崎・旭と、逃げるように密会を繰り返していた。 　恋心を隠しもせずに同じ時間を重ねていたのだ…

　ペンネーム、水野亜玖亜。大学生。夢はライトノベル作家になること。得意ジャンルは異世界ファンタジーだ。 　そんな私——赤谷綾香は、ある日、小説投稿サイトに投稿した作品にコメントを…

「それは、ヴィダールと呼ばれる存在が生み出した神造兵器と人間たちの、旧世界の支配者との戦い」 　地球と同じ時間軸を共有する異世界「フォーミッド」 　そこにあるアクシミデロと言…

荒川の河川敷で行われる花火大会は、堀切の小学生にとって夏休み最初のイベントであった。 そんな日に、転校した由美子が戻ってきている噂を聞いた子供たちは、それぞれの思いを抱えながら、…

毎日同じ時間同じ車両に居るサラリーマンを眺めることが彼女の日課だった。 いつも変わらず紺系のスーツに青系のネクタイ。 月曜日はスマホでマンガを読み、金曜日は大体寝ている。 そんな…

人類は宇宙に進出した。 しかし、広い宇宙の中で人が過ごせるのは、鳥かごのように狭い居住船だけだ。 毎日同じ時間に点灯し、同じ時間に消える人口光源はいまだに青やオレンジを表現するこ…

子育てを終えた五十四才のシングルマザー・里子。同じ時間、同じ道を会社と家の往復をする毎日。なんて、つまらない人生を歩んできたのだろうか？　そんなある日、十九才年下の春翔と出逢う。…

　ブランは若干14歳にして王国の騎士であり、王族シャーロット姫の専属護衛騎士だ。 　騎士として、彼女の身の周りの安全を確保する為、日々同じ時間を過ごすのだけど……。 　二人きりに…

アラフォーのおっさんが、酒が縁で一回り以上歳の離れた女性と知り合って恋愛する話 酒の飲み過ぎで記憶の無いまま一夜を過ごしてしまった二人。 女性に好意を持ちながらも年齢を考えて素直…

深々と降る大粒の雪…空から舞い降りるはずの雪が、重力を無視する様に地上から空へ舞い上がる場所がある。 未練を残しながら別れた二人が、同じ時間同じ場所で同じ逆さ雪を見る。 それはた…

桜が咲き誇ったある朝のこと。 いつもと同じ時間の いつもと同じ場所で 交わることのなかった僕たちの人生が 同じ時間を歩み始める。 花が咲いたような笑顔を浮かべる君は いつだって…