
新生「ドラゴンノベルス」の柱となる、新時代のファンタジー小説大募集!
3,429 作品
この度は「第7回ドラゴンノベルス小説コンテスト」にご応募いただき、誠にありがとうございました。
今回は昨年に続き、長編部門と中編部門の二部門でコンテストを実施いたしました。恒例となっている異世界/現代ファンタジーの長編部門に加えて、編集部からのお題を掲げた中編部門にも多くの方にご参加いただき、応募総数は昨年を上回る3,429作品にものぼりました。ご応募いただいたすべての作品、著者の皆さまに重ねてお礼申し上げます。
ドラゴンノベルス小説コンテストでは、読者選考ののち編集部内の一次選考を行っており、今回は長編25作品、中編10作品を最終選考候補といたしました。いずれもどこか強みを持つ作品で、それぞれ楽しませていただきましたが、最終的にストーリーやキャラクターなど非常に高いレベルでバランスの取れた作品である『最強付与士の無自覚ハーレム冒険譚~仲間の顔も素性も知らないけどたぶん全員男だと思う~』を大賞に選出させていただきました。また、中編部門から「現代SF×ファンタジー」賞1作、長編部門から特別賞5作を選出いたしました。
受賞作は、2026年刊行を目指して書籍化を進めてまいります。楽しみにお待ちいただけますと幸いです。
また、第8回のコンテストも2026年春に開催を予定しております。
今後もドラゴンノベルスをどうぞよろしくお願いいたします!
総評・講評:ゲーム・企画書籍編集部
わずか3年でS級にまで駆け上がったパーティー【名称未定(アンノウン)】
アバンテールの町で最強格の一つとして名をあげ続けていた。
強さは本物。だが全員正体不明。顔も素性も性別年齢種族全てが秘匿。
そして遂に、リーダーが立ち上がる。そう、リーダーも何も知らないのだ!3年間何も知らなかった!
これは全員”男”だとなんとなく信じているリーダーの無自覚ハーレム冒険譚である。
アレク・ミョウジンは長い軍務を終え、晴れて自由の身になった。
これからは自由の身だと、地球にある大学に入学する為に宇宙船で移動中に宇宙船の故障により、汎人類知性連盟には認知されていない、未知惑星に不時着する事となる。
冷凍睡眠ポッドに閉じ込められ、挙句に未知の惑星で遭難する事となったアレク。
そこにドラゴンとしか呼べないような、ファンタジー巨大生物が現れる。
状況が飲み込めないまま、アレクはドラゴンと対決する事となる。
アレクは無事に地球へと帰還できるのか?
未知の惑星に不時着した宇宙船。冷凍睡眠ポッド内で動けない主人公という特殊な設定を軸に、SFとファンタジー的世界観を違和感なく融和させた作品。エルフの村に襲い掛かる巨大なドラゴン。そのドラゴンに立ち向かうのは、主人公が自分の意識をコピー&ペーストした200体以上のゴーレム――。そのスペクタクルかつシュールな情景に、わくわくさせられました。また、身体のない主人公がファンタジー的な惑星でどうやって生き延びていくのかというサバイバル的要素に加え、主人公と船舶AIのコミカルな会話などで、読みやすいエンタメに仕上げていると感じました。
若き伯爵家当主、ジークヴォルト・フォン・クレヴィング。彼はある日、自身が転生者である事……そして、ゲームの中の悪役貴族である事実に気付く。その瞬間、彼は思わず叫んだ。
「クハハハハハ!最高じゃないか!」
彼にとって、悪役こそが理想の姿。念願の悪役に転生した彼は、最高の悪役を目指し悪の王道を突き進む――。
ゲームの悪役貴族に転生していたことに気付いた主人公が、最高の悪役を目指して悪の王道を突き進んでいくという本作。悪役転生モノは数あれど、悪役の美学を貫く主人公の目的がシンプルでわかりやすく、巨悪を目指して小悪を討つというスカッと爽快感のある展開に引き込まれました。「悪役を最高に輝かせる!」という主人公の熱い思いと周囲の温度差も絶妙! 主人公の言動そのままに悪役を描くことにとことんこだわり、突き抜けた秀作です。
とあるプラントの研究者・高橋翔太は、裏山の洞窟で奇妙な金属の球体を発見した。その不思議な球体は光を放ち、なんと翔太のスマホと通信を始めるのだった。
そして、画面に表示されたメッセージによると、この球体は、宇宙的組織が派遣した惑星開拓船のコアユニットで、船体を喪失しコアだけが裏山に墜落したのだという……
そこから翔太は、コアがもたらす夢の技術革新と、思いもよらない世界的陰謀との狭間に立たされていくのだった――。
突飛な設定ながら、それに翻弄される人間模様がリアリティをもって描かれた、読み応えのある本格作でした。SFとしてだけではなく、ミステリー、サスペンス、企業スパイ小説としても楽しめるバラエティに富んだ展開により、中弛みすることなく読み進めることができました。また、目の前に突然現れた非日常を、日常として受け入れていく主人公たちの言動には、普遍性と納得感があり、ともするとコミカルになりそうな世界観を、ほどよく引き締めています。一見無理筋とも思えるストーリーも、予想を超えた方向に話が展開していく独特の「けれん」として、作品の魅力のひとつになっており、老若男女、幅広く楽しめる作品と評価し、特別賞としました。
高校2年のとあるクラスの黒板が突如、ディスプレイに切り替わった。
『ディープダンジョンの世界へようこそ』
というメッセージと共に、強制的にガチャを引かされる。
そこはゲームであるものの、引いたガチャの力を使って生身でモンスターと戦うことを要求される殺伐とした異世界だった。
外は真っ暗闇、進むべき道が示されるが、突然の出来事にクラスメイトたちがざわつく。
しかし、生徒会長の榊とクラスのムードメーカーの神崎がクラスメイトを引っ張りまとめあげ、ディープダンジョンの攻略を進める。
――そんな彼らの蚊帳の外にいる生粋のぼっちである松井は、ゲームの説明をしてくれる地味な能力を持つ「物知りなイルカ」にゲームの進め方を聞きながら、ひっそりとダンジョンに潜るのだった。悲壮な覚悟で挑むクラスメイトたちとは逆にのんびりとした面持ちで。
「物知りなイルカ」って、その昔PCのデスクトップに常駐していたアレ? あのイルカが主人公に与えられた能力?……と興味をひかれ、気がついたら意外な展開や丁寧な構成に引き込まれていました。クラス丸ごとの転移後、ガチャによって生徒ひとりひとりに与えられた能力でサバイバルを生き抜く……といった内容ですが、山田さんの独白あたりから独自の展開があり、最後まで読ませる内容に仕上がっています。第二部にも期待したいです。
プレッパー ✕ タレット設置 ✕ モンスター災害デスゲーム
核戦争にも巨大噴火にも耐える万全の地下拠点を備える主人公が、ユニークスキルのタレット設置で楽々生存&モンスター討伐を成し遂げていきます!
入浴中にふと思いついた設定をそのままブチ込んでギャル味を配合したカオスストーリーが、今始まる!!
プレッパー。聞き慣れない方もいらっしゃるかもしれませんが、ゾンビパニックや核戦争後を描いた作品で、それらに備えるならどうすればいい? と考えたことがある方も多いのではないでしょうか。本作は、そんな本来であれば突然始まるはずの危機的状況に対して備えが万全だったら? というもしもを楽しめる作品です。スキルと備えを駆使する試行錯誤の楽しみとそれが見事にハマったときの爽快感。ヒロインとの共同生活も魅力のひとつで、ともすれば単調になりかねないところ、良いアクセントとなっていました。
ある日突然神だと名乗る人物がテレビや動画サイトをジャックした。
曰く、地球は最近停滞していると。このままだと何時まで経っても自分たちが望む進化が起きない、と。
だからテコ入れするため「ファンタジー要素を現実に入れるから、その足掛かりとして、こっちで選んだ人間にダンジョン作って運営してもらうよ」「そのほかの人間がそのダンジョンに入って攻略して、戦利品を持って帰って研究して文化を進化させてね」と言った。
世界中から選ばれた国の選ばれてしまった不運な人間たちがいる。
日本もまた、選ばれた国で、もちろん、選ばれてしまった不運な人間もいる。
これは、そんな選ばれてしまった人間である土方一颯の、ダンジョン経営物語である。
現代にファンタジー要素を取り入れるため神によってダンジョンマスターに選ばれてしまった女性主人公のダンジョン経営ドタバタ奮闘記。ネットスラング満載の語り口は一見人を選びますが、仲間どうしのわちゃわちゃしたやり取りや掲示板の的確なツッコミなど、丁寧に描かれたキャラクター性がクセになります。神や国などのスケールの大きな現実の要素をうまく作品に取り入れ、ファンタジーに仕立てている点も作者のセンスを感じました。現代ダンジョンモノとして独自の世界を構築し、没入感高く楽しめる作品に仕上げていることを評価して、特別賞といたしました。
「第7回ドラゴンノベルス小説コンテスト」の中間選考の結果を発表させていただきます。
多数の力作を投稿してくださった皆様、並びに作品を読んでくださった皆様には、改めて深く御礼申し上げます。
※掲載の並びは作品のコンテストへの応募順となっております
講評
作中でS級パーティーのリーダーである主人公は、教会のシスターに相談する。「仲間が全員顔を隠してて俺は素顔を知らない」「正体が知りたい」と。お話の核としては、それだけなんです。それだけなのに面白い。キャラクター性や物語としての構図はシンプルでありながら、いずれも磨き抜かれているため、要所できちんとセンスが光る。キャラクター同士の掛け合いが最高に楽しいです。そしてこれだけ面白いのに、大きな事件はまだ起こっていない。面白さの底がしれません。満場一致での大賞選出です。