
恋愛はそっちのけ! 好きなように人生を謳歌しちゃおう!
376 作品
この度は「宮殿から飛びだせ!令嬢コンテスト」にご応募いただき、誠にありがとうございました。
今回のコンテストでは「思わず応援したくなるような、自立した女性の物語」をテーマに募集いたしましたが、数多くの素敵な作品を拝読し、編集部一同、本当に嬉しく思っております。 どの作品も、主人公が生き生きと輝いて描かれており、設定やキャラクターにもそれぞれのオリジナリティが感じられ、とても楽しく選考させていただきました。
編集部での選考を経て、大賞1作品、特別賞4作品を選出いたしました。 入選作については各作品の講評をお読みいただければと思いますが、いずれも魅力的かつ個性的な女性主人公が活躍し、思わず主人公を応援したくなるような作品ばかりです。
受賞作は、担当編集が付いて電撃の新文芸からの書籍化を目指します。 読者の皆さまへお届けできる日を心待ちにしております。ぜひご期待ください!
今後も電撃の新文芸をどうぞよろしくお願いいたします!
電撃の新文芸編集部
「わたし何かやっちゃいました?」
流行の悪役令嬢ハッピーエンド系の物語のヒロインってどう思う?
そう、ざまあされる人ですよ。
悪役令嬢こそがヒロインじゃない? そしてヒロインが悪役でしょ。
わたしはこの悪役令嬢が活躍する物語の中のヒロインに生まれ変わった。
しかもこれが初回ではない。
悪役令嬢が何度も同じキャラに死に戻りしたりするのとはちょっと違って、いろんな物語のヒロインに転生転生また転生を繰り返してきた。
最初はね、乙女ゲーヒロイン、もしくは少女漫画、もしくは女性向けライトノベルに転生! やったああ!! な感じだったよ。
男爵家の養女が学園に入学すると逆ハ―状態に。
名もない村から不意に現れた聖女が王太子妃候補に。
姉の婚約者から想いを寄せられる病弱な義妹。
あとなんだ、「キミを愛することはない」とか言っちゃう男の本命ですか。
いろんなパターンの物語のヒロイン、やらせていただきました!
そんなわたしが体験してきたヒロイン人生。
もう疲れた。
そんなざまあされるヒロインのアリスは、物語の強制力から逃れるために別大陸へ。憧れのスローライフを彼女ははたしておくれるだろうか?
あらぬ罪を着せられたアイリス・グランドリア。
彼女がいくら冤罪だと叫んでも誰にも信じてもらえず処刑されることに。
この国の処刑方法は底が見えぬほど深く、毒が満ちる奈落の谷へ突き落すこと。
失意のまま、アイリスは谷の下に落ちていった。
――ゴチンッ
そして、地面に激突。
「あっ」
死んだかに思われたその瞬間、自分が転生者だったことを思い出した。
神様から授かった力で死を回避したアイリスは、自分を処刑した国を捨てることに。
これは、気ままに異世界を楽しみながら無自覚に伝説を作り、皆に愛されていく女の子の物語。
身に覚えのない罪で処刑されてしまった令嬢のアイリスは、今まで役立たずだと思われていたスキルの力で生き延びることに。死を目前にした衝撃から前世の記憶を思い出した彼女は、広い世界を旅して様々な景色を見てみたいと旅にでる。実はスゴ腕薬師のアイリスが人助けをしながらやがて人々の優しさに触れていく様子は、読んでいてほっこりした気持ちになりました。ちょっと天邪鬼な性格のもふもふ狼の相棒との掛け合いも巧妙で、世間知らずでお人好しな主人公のキャラクターにも好感が持てました。一緒に旅をしたいなと、そう思わせてくれる素敵な作品でした。
頬を叩かれて、目覚めた私。
目の前には怒りに満ちた金髪王子と、ピンク頭の女の子……それからよく手入れされた英国調の庭が広がっていた。
ここどこ?
毎日ランニングで鍛えた筋肉質で健康的な腕は、細く色白くなっていた。
これ、誰の手?
急に流れ込んでくる記憶に、自分が悪役令嬢オリビアになっていることを知ってしまう。
「やらかした後って! そんな面倒くさい役割、捨てます捨てます!」
これは、私が悪役令嬢という役割を捨て、好きなことをやる話。
本作は、ゲーム世界の悪役令嬢に転生してしまった主人公が、役割を捨て、辺境で自由に生きる物語。新文芸で人気な『転生』『悪役令嬢』という要素を上手く用いつつ、キャラクターの個性が目立つ一作です!
主人公のオリビアは思い切りの良い大胆な性格で、敵には一切の容赦なし。妖精に愛されるだけでなく、なんと魔族までも仲間にしてしまいます。
冒頭を読んだときには想像できなかった意外性と爽快感のある展開に、読む手がとまりませんでした。オリビアによって、辺境の領地はこれからどうなっていくのか。今後の展開に期待しています。
夢だった薬師として幸せにやっていますが、私を追い出した母国は大変らしい
王妃・アストリッドは、遊びに不倫にうつつを抜かす旦那・ローレンの代わりに、趣味の薬学を学ぶ時間も取れないくらい、公務に追われる日々を送っていた。
一方、ローレンはといえば、アストリッドの妹・ハンナと不倫に走る始末。
挙句の果てには計略を使い、アストリッドの屋敷に火を放って、焼き殺そうとする。
使用人に助けられ、辛うじて命を取り留めるも、王妃の座を追われたアストリッド。
彼女は薬師として逃亡生活を送った末、隣国へと逃げる選択をする。
その道中で、隣国の冷酷王子・ルベルトと出会ったアストリッドはそれがきっかけにルベルトに気に入られて、薬師として請われることとなった。
彼と接しながら、平穏な日々を送るうち、アストリッドは絶望から立ち直っていき、少しずつ本当の幸せを知っていくことになる。
(なお、ルベルトから注がれる愛情にはなかなか気づけない)
一方、略奪愛に走った妹・ハンナはといえば、王妃の仕事量に忙殺され、絶望を見ることとなる。
元旦那・ローレンはといえば、なおも不倫を繰り返し続けていて――
妹に夫を奪われた元王妃・アストリッドが、国から逃げ出すところから始まる本作。薬師としての知識を活用し、力強く生き抜いていくその姿は、読んでいてとても応援したくなりました。また、逃げ延びた先で出会った異国の王・ローレンスは、その地位にふさわしい凛々しい男性ですが、ふと見せる弱さやアストリッドへデレるシーンが、ギャップがありとても可愛らしいかったです! 二人が今後、どのような関係を築いていくのか、一読者としても楽しみにしております。
王女クロエに発現したスキルは【草生える】。
文字通り雑草を生やすだけのふざけたスキルだった。
笑いものにされ、無能と蔑まれ、彼女は荒れ地へと追放された。
「笑えなくて草生えますわ。でも諦めてたまるものですか!」
草一本生えない荒れ地に、クロエは草生えるスキルで立ち向かった。
人の上に立つ王族として領主として、民の困窮を見過ごせなかった。
土地に眠る水脈を呼び起こし、奇跡の力を借りながらも努力を続ける。
小さな村は少しずつ豊かになって、人と羊と牛が集まり始める。
しかしそんな村に悪意の手が伸びる。入り乱れた思惑はやがて戦乱に発展してしまう!?
追放された王女の逆転建国ファンタジー!
草は生えますが意外に真面目な物語です!
「草生える」という文字列を見てギャグに寄せた内容なのかと読んでみたら、内容は非常に心温まる領地開拓ストーリーで衝撃を受けました。主人公であるクロエの「笑うと草が生える」というスキルは間違いなく奇天烈なのですが、追放されても常に前向きに、どんなルーツの人にも分け隔てなく接し、コツコツと努力を積み重ねて領地を発展させていく物語はコメディとシリアスのバランスが絶妙で、どんどん続きが読みたくなる作品に仕上がっていると感じました。
「宮殿から飛びだせ!令嬢コンテスト」の中間選考の結果を発表させていただきます。
多数の力作を投稿してくださった皆様、並びに作品を読んでくださった皆様には、改めて深く御礼申し上げます。
※掲載の並びは作品のコンテストへの応募順となっております
講評
乙女ゲーム、少女漫画、ライトノベル……いろいろな物語に転生を繰り返し、「ざまあヒロイン」を体験してきた主人公。ヒロインとしての楽しさも、ざまあ展開を受ける辛さも味わった主人公は、もう物語に疲れてしまい、物語から逃れてスローライフを目指すが……? まさに、今回のコンテストのタイトルでもある「宮殿を飛び出せ」にとどまらず、「物語のシナリオ」からまで飛び出した彼女の行動に目が離せませんでした。編集部の期待に沿いつつも期待を超えたテーマの作品であり、文句なしの大賞作品だったと思います。